新興国の原発ラッシュが始まる
図1で示したように、1970~90年代にかけて原発は急速に普及し、その後に伸びがストップした。その原因の1つは、東西冷戦の終焉であろう。国別に原発の導入時期をプロットした図3を見ると分かりやすい。西側では、56年の英国のコールダーホール1号炉を端緒として、フランス、米国、ベルギー、カナダ、日本、イタリアと矢継ぎ早に導入が進んだ。
63年に日本(東海村)とイタリア(ガリリアーノ)が運転を開始、後に設定されるサミット(主要国首脳会議)のイニシャルメンバー6カ国(G6)では、早くも導入が完了した(カナダも含めるとG7に導入完了)。その後は北欧、中南米、極東における主要な国々で導入が進められた。
サミットでは2005年にG8に加えてアウトリーチと呼ばれる5か国(ブラジル、インド、中国、南アフリカ、メキソコ)が準メンバー的に参加しており、図3-1でもこれらの国々に順次行き渡っていることが分かるであろう。
対抗する東側はこれに遅れること約15年、70年代から精力的に原発を建設し、90年までにほぼ展開を完了している。東西のバランスを取るために、西側と同じようなかたちで、旧ワルシャワ条約機構加盟国やCIS(独立国家共同体)に展開していったのである。
ところが、90年以降になると、両者申し合わせたかのように、ばったりと展開活動は止み、その後20年近くにわたってほぼ変化のないままに現在に至っている。ベルリンの壁が崩壊したのは、89年の11月であり、2年後の91年の12月に旧ソ連は崩壊した。
これで終焉したかのように思える原発の拡大だが、新興国では新たな導入計画が相次いでいる。既に原発保有国である中国はこれから20年間で100基単位の原発建設を計画している。サウジアラビアなどは世界最大の石油埋蔵量を誇るOPEC(石油輸出国機構)の盟主であるにもかかわらず、2030年までに3億ドル(24兆円)という途方もない予算を計上し、16基の原発を建設する計画という。
G20に加入したインドネシア、トルコ、オーストラリアも原発の導入計画を発表した。人口増加と経済成長が著しい新興国では、電力が足りないからである。こうしたエマージング市場の爆発的成長が、原発建設を再び加速させようとしているのだ。
こうした電力需要の急拡大は、原発導入の新たな動機づけと言えるだろう。だが、東西陣営のつばぜりあいの中で拡大していった原発は、「原爆の爆薬であるプルトニウムの生産工場」という側面が強い。簡単にこのカラクリを紹介しておこう。
> 3号機の10000ミリシーベルト/時の瓦礫一つを、威勢のいい核保有論者にでも持たせて → 1時間で致死量放射線浴びるようながれきを持たせれば数ヶ月以内に死にますから精神的な自爆テロリストでしょう。ダーティボムは国連常任理事国が持つ核抑止力ではなく、北朝鮮すら下回る核テロリスト国家認定を意味します。こうなれば黙るどころか国際的に経済制裁と軍事制裁を受けて簡単に日本終了です。> 分離すればプルトニウム型原発は簡単につくれるのではないか。技術的になんの困難があるのか? → すでにMOX燃料という形で一部の軽水炉でプルトニウムを燃やしています。ただし、現行の軽水炉はMOX燃料を燃やすために最適化されていないので従来燃料使用時の安全余裕を減らして運用しています。フルMOX燃料の軽水炉は現在建設中、または建設予定の第3世代原子炉で実現する見込みですが、MOX燃料を最大限に活用するには第4世代原子炉である高速炉や高速増殖炉が必要です。高速炉、高速増殖炉ともに高速中性子を活用するための冷却設備開発が必要なため、実用化に数十年は必要です。日本の高速増殖炉は液体ナトリウム冷却で開発を進めていますが、ナトリウムは水と反応するためナトリウム漏洩による火災などの問題、事故発生時に放水も行えない、などの大きなハードルがあり、そうそう簡単には進まないでしょう。(2011/12/03)