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ユーロはこのまま自壊するのか

危機は感染爆発のように伝染する

  • 竹中 正治

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2011年11月30日(水)

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ユーロ危機で稼ぐヘッジファンド

 11月23日に放映されたNHKスペシャル「ユーロ危機 その時日本は」をご覧になっただろうか。

 番組では、イタリア国債のCDS(credit default swap)を買ってイタリア国債の売りを仕掛け、国債価格の急落(利回り急騰)で儲けるヘッジファンドのマネージャーに密着取材していた。国債の急落で儲けた後、「次はどこかな、この先数カ月はこの手で儲けるチャンスに恵まれそうだ。サンキュー・イタリア!」とほくそ笑むヘッジファンドのマネージャーが印象的だった。

 CDSというのは金融派生取引としてのオプション取引の一種で、この場合ヘッジファンドはイタリア国債のCDSを買い、オプション料(一種の保険料)を払う。国債価格が下がる(利回りが上がる)とオプション価値が増加して、当初払ったオプション料を上回る利益を獲得できる。手口としてはシンプルなものだ。

 なぜそれが国債の売りを引き起こすのかというと、ヘッジファンドにCDSを売った金融機関は国債価格が下落すると損失が出るので、価格変動に応じてある比率でヘッジ(リスク回避)のために現物の国債を売る。国債価格がさらに下がるとCDSの売り手の損失は増加するので、国債の売りヘッジの比率を上げなくてはならない。こういう仕組みでヘッジファンドの国債CDS買いは現物の国債の売りを誘発するのだ。

 番組に登場したヘッジファンドのマネージャーは、ユーロ圏の国債売りの同調行動を誘う効果を意識して取材に応じていると感じた。実際、日本の機関投資家や投資信託もユーロ圏諸国の国債をポートフォリオから落とし始めていると報道されている。

危機は感染爆発のように伝染する

 私はこの番組を見て強い既視感に襲われた。想起したのは2008年のリーマン・ショックではなく、1997~98年のアジア通貨危機だ。

 当時タイやマレーシアなどは日本をはじめ先進国からの直接投資で好況を謳歌していた。そのためもあり、これら諸国は国内の自国通貨の金利が高かった。そこで現地の企業の間では、相対的に低金利のドル建ての短期融資を借りて、現地の通貨に転換し、国内投資に充当することがはやった。つまりドル債務(ドル売り・自国通貨買い)の為替ポジションが莫大に積み上がった。これに目をつけたのがソロス氏など大手ヘッジファンドであり、これらの国の通貨に対して外為市場で売り投機を浴びせた。

 売られてタイバーツの対ドル相場が下がると、ドル短期債務・バーツ長期投資資産の財務持高を積み上げていた企業には為替損が生じる。彼らも損失を抑制するためにバーツ売り・ドル買いに殺到するようになった。結局、タイ中央銀行のバーツ買い介入で抑えきれなくなり、バーツ相場は暴落した。

 バーツ相場の下落でドル債務から生じた莫大な為替損が企業の自己資本を毀損し、銀行借入は返済不能となった。そのため通貨危機は一気に金融危機に深刻化し、しかも危機は国際的な信用収縮を引き起こしたので、感染爆発のようにアセアン諸国からほかの国々に金融危機が波及したのだ。

 タイバーツ売りの代わりにイタリア国債売りという違いを除けば、ヘッジファンドなど投機筋の売りを契機に始まった国債相場の下落が、国債を保有する欧州の金融機関に莫大な評価損を発生させ、信用収縮と危機が他国に伝染するという点では、全く共通している。

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