「田村耕太郎の「経世済民見聞録」」

実は切ない、中国人の世界展開

中国人の原動力は政府不信にあり

バックナンバー

2011年12月1日(木)

1/3ページ

印刷ページ

世界に展開する中国人

 日本にはびこる中国脅威論。これは、TPP議論で騒がれた米国陰謀論に並ぶ、過剰な被害妄想だと思う。中国は脅威というより、内からぐらつき始めているのではないか。中国の繁栄は続くかもしれないが、人材と富の流動に拍車がかかるだろう。それは「中国人の海外での活躍の背景に、切ないまでの中国政府不信がある」からだ。世界に果敢に進出している中国人。その大半は、中国国家や国営企業のために身を捧げるような人たちではない。

 中国人が目覚ましい勢いで世界各地へ進出している。米国の国際教育研究所は、米国の大学で学ぶ外国人留学生が2011年、過去最高の約72万3000人に達したことを明らかにした。2000年度と比べて32%と激増している。その中で、中国人留学生の増加ぶりは他を圧倒する。米国へ最多の留学生を送り出しているのは中国で約15万8000人だ。全留学生の18.5%を占める。2位はインドの10万4000人、3位は韓国の約7万3000人。この数字を見ると、中国人はグローバルに活躍して、まさに世界を制覇せんばかりの勢いだ。

 インパクトがあるのは人数だけではない。その奮闘ぶりも各地で話題になっている。ボストンコンサルティンググループ(BCG)で東京代表を務める御立尚資氏からこんな話を聞いた。BCG東京は今年から、北京で中国人を採用し始めた。御立代表をはじめ、BCG東京を驚かせたのは、日本語の知識が全くなかった彼らが1〜2か月で流ちょうな日本語を話すようになったこと。これが日本人社員に大きな刺激を与え、社内を活性化させたという。日本でも即・戦力になるくらい気合が入っているのだ。

東大生の心を打った中国人留学生の本音

 世界に展開する中国人の人数や彼らの気合が、中国脅威論を増幅させる。この背景にあるのは国家資本主義なのか? 中国に忠誠を誓った若者たちが国家のために、身を捧げるべく頑張っているのだろうか?

 このことについて考えさせられる機会があった。つい最近のことである。東大の駒場祭を訪れ、刺激的なパネルディスカッションに登壇した。テーマは「若者よ世界へ出よ」というもの。「中国で最も有名な日本人」と言われる北京大学研究員の加藤嘉一氏、東大理事の江川雅子さん、そして私の3人が「若者の海外展開」について熱く語り合った。

 ディスカッションは、3時間半近くの長丁場だったにも関わらず、大勢の立ち見が出るほどの大盛況。もちろん出席者の大半は東大生だった。

 「東大生よ、海外へ出ていけー」という趣旨を、理路整然(?)と具体例を持って熱く説いていたら、中国人留学生から鋭い指摘をもらった。

 「中国なら『若者よ世界へ出ろ』なんてパネルは成立しません。だって、大人から言われなくても、みんな猛烈に外へ出たいんですから! 中国人には日本人と比べてたくさんのハードルとリスクがあります。情報は政府に統制されているし。ビザを取るのも大変だし。お金も日本人よりないです。それでも皆、海外へ出たいんです。私たち中国人から見て日本人は、留学するにも恵まれています。なのに、なぜ出ないのですか」

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント4 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)

田村 耕太郎 前参議院議員、元内閣府大臣政務官(経済財政政策担当、金融担当)、元参議院国土交通委員長。早稲田大学卒業、慶応大学大学院修了(MBA取得)、米デューク大学ロースクール修了(証券規制・会社法専攻)(法学修士号取得)、エール大学大学院修了(国際経済学科及び開発経済学科)経済学修士号、米オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了。



このコラムについて

田村耕太郎の「経世済民見聞録」

政治でも経済でも、世界における日本の存在感が薄れている。日本は、成長戦略を実現するために、どのような進路を選択すればいいのか。前参議院議員で、現在は米イェール大学マクミラン国際関係研究センターシニアフェローを務める筆者が、海外の財界人や政界人との意見交換を通じて、日本のあり方を考えていく。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン