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フューチャリングとデザリングのお話

表記の変化は言葉の「定番」現象

2012年1月10日(火)

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 明けましておめでとうございます。今年も「社会を映し出すコトバたち」を、よろしくお願いします。2012年最初の更新となる今回の記事は、少し柔らかい話題をお送りしましょう。

 みなさんは、ラジオのDJが「フュー[fyu-]チャリング」という発音をしているのを聞いて「あれ?」と思ったことがありませんか? あるいは会社の同僚が「ちょっとこれシュミ[shumi]レーションしとこうよ」と発音しているのを聞いて、それを修正すべきかどうか悩んだことがありませんか?

 今回はそんな「言い間違えやすいカタカナ語」について、考察します。

イエニスタ? イニエスタ?

 本記事を執筆するきっかけは、年末に「イニエスタ」という名前を見かけたことです。アンドレス・イニエスタ(Andres Iniesta)は、世界的な強豪チームであるFCバルセロナに所属する有名サッカー選手。2011年末に日本で開催されたFIFAクラブワールドカップにも、FCバルセロナの一員として出場。同チームは見事優勝しました。

 このイニエスタについて、本人とはまったく関係ない場所で起こった「ある出来事」が筆者のツボにハマっています。お笑い芸人の土田晃之(てるゆき)が、2010年のFIFAワールドカップ「スペイン対スイス」(2010年6月16日)の中継の際に、司会のジョン・カビラとの会話でこんな言い間違えをしたのです。土田「イエニ[ieni]スタのパスが大好きなんですよ」。カビラ「ああイニエ[inie]スタね」。土田「そうイエニ[ieni]スタに注目したいですね」。

 この話には後日談があります。お笑い芸人のワッキーは、土田晃之が楽屋のトークでも「イエニ[ieni]スタ」としゃべっていることに気づいていました。しかしながらワッキーは「面白いから注意しなかった」というのです(参考:ニッポン放送「ナインティナインのオールナイトニッポン」2010年6月24日深夜放送分)。なるほどお笑いの世界らしいエピソードです。

 イニエ[inie]をイエニ[ieni]に間違えてしまう感覚は、筆者も理解できます。日本語の語彙で「いに」で始まる言葉と「いえ」で始まる言葉のどちらがメジャーかというと「いえ」の方だと思うからです。

 ちなみに広辞苑(第六版・電子版)で「いえ」の前方検索(いえが先頭に付く言葉の検索)を行うと「家」「家柄」「イエスタデー」「イエロー」「胃炎」など135件の見出しがみつかります。これに対して「いに」を前方検索すると、「イニチアチブ」「いにしえ」「イニシャライズ」「委任」など36件の見出ししか見つけることができません。

 それゆえ「ひょっとしたら筆者も、イニエスタの名前を間違って覚えてしまう可能性があったのでは」と想像してしまうのです。自分がテレビに出る人でないことに安堵しています。

テ[te]ザリング? デ[de]ザリング?

 言い間違えにおける「直近の秀作」は、テ[te]ザリング(tethering)の言い間違いであるデ[de]ザリングではないでしょうか。最近、スマートフォン関連の話題でよく見かけるようになりました。

 テザリングの原型であるtetherという動詞は「何かを繋ぎ止める」ことを意味します。転じてスマートフォンの分野では、スマートフォンを外部モデムとして使用することを指すようになりました。パソコンやゲーム機などを持って外出した際に、携帯電話回線を通じたネット接続を実現するため、スマートフォンをモデムとして利用することです。

 このテザリング機能について、1年ぐらい前に興味深い出来事が起こり話題になりました。KDDIが特許庁に対して「デ[de]ザリング」の商標登録を出願したのです(出願日は2011年2月21日、出願番号は商願2011-11721)。このことをネット上の情報サイト(GIGAZINEなど)が同年4月に報道。ネット上で大きな話題になりました。念のために繰り返すと、当時KDDIが出願したのは「テ[te]ザリング」ではなく「デ[de]ザリング」だったのです。

 実はKDDIは「デ[de]ザリング」の申請から1週間たった2月28日に、改めて「テ[te]ザリング」も申請しました(出願番号は商願2011-13876)。同社の担当者は、表記の誤りに気づいて慌てて出願し直したのかもしれません。

 この事例もイニエスタの時と同様、筆者には感覚が理解できます。ちなみに広辞苑で「でざ」「てざ」を前方検索すると双方とも6件ずつ見出しが登場します。この結果だけを見ると、語彙の勢力としては両者が拮抗しているように思えます。ところが検索対象をカタカナに限定すると、「デザ」については「デザート」「デザイン」など5件の見出しがみつかるのに対して、「テザ」ではカタカナが1つもみつかりません(「手触り」「手酒」などの言葉しかない)。カタカナに限って言えば「デザ」が優勢と言えます。

 そもそもtetherという英単語自体、一般的な日本人には馴染みがありません。さらに、「デザイン」などの既存語の音に引っ張られる。テザリングという単語には「言い間違えの罠」が重層的に隠れていると言えそうです。

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「フューチャリングとデザリングのお話」の著者

もり ひろし

もり ひろし(もり・ひろし)

新語ウォッチャー(フリーライター)

CSK総合研究所を経て、1998年から新語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』(自由国民社)で「流行現象」のコーナーを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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