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武器の「目的外使用」と「第三国移転」をどこまで厳密に運用するのか?

武器輸出三原則等の緩和に続けて考えるべき3つの論点(後編)

  • 佐藤 丙午

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2012年1月12日(木)

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「目的外使用」と「第三国移転」の規制を徹底するのは困難

 藤村談話で注目すべきは、「目的外使用」と「第三国移転」の問題である。これまで武器輸出三原則等をめぐる議論は、この2つの基準の曖昧さと、その運用の困難さが多くの混乱を招いてきた。

 これまでも、日本の企業が開発した汎用技術を組み込んだ装備品を、米国や豪州が他の国に提供し、受け取った国が軍事目的で使用した例が存在する、との指摘はあった。日本は、防衛装備品の運用を自国防衛に限定しており、国内での使用を前提としている。しかし、共同生産国は、それぞれの国の運用や輸出戦略の下で共同生産した装備品などを活用する。このため、日本が自国製の武器や武器技術について、共同開発や生産の枠組み決定の段階で使用目的と移転管理の厳格化を求めることは可能だが、その後の状況の変化まで完全にモニターするのは難しい。

 藤村談話は、平和協力と国際共同開発の両案件について、日本政府の事前同意なく「目的外使用」と「第三国移転」を禁じるとある。この2つの条件は、日本の防衛装備や技術が、武器輸出三原則等や日本の安全保障政策に反する目的に使用されないことを担保するもの。もし厳格に運用すれば、日本の武器などが拡散するリスクは極めて小さくなる。日米の武器及び武器技術協力に関する2国間取り決めの中にも、これら2条件が盛り込まれている。防衛装備品関連の国際協力において条件付与は一般的な措置である。

 ただし、この2条件をどのように適用するかは極めて大きな問題を引き起こす。まず、藤村談話は「目的外使用」を、日本政府の事前同意なく「当該防衛装備品等が当該枠組みで定められた事業の実施以外の目的に使用されること」と定義している。日本の技術などの流出を防止するためにも、また移転された武器及び武器技術が日本の政策に反する形で使用される可能性を閉ざすためにも、移転先国がこの条件に同意することは重要である。技術流出は安全保障政策上のリスクに加え、防衛生産面で競争相手の台頭を許すことにつながる。

 しかし、いったん国境を越えて出て行った技術の使用方法を規制する実効的な措置を取ることは難しい。相手国側のコンプライアンスに期待する以外の方策は少ない。例えば、移転先国に、現地査察による確認の受け入れを義務づける方法が考えられる。だが、この方策は、自国の防衛装備や技術などが持つ魅力を市場において減ずることにつながる。さらに、多国間でこれを実施する場合には手続き上の煩わしさが大きくなる。

 次に、藤村談話は「第三国移転」を「当該防衛装備品等が第三国に移転されること」としている。「第三国移転」問題は、汎用製品の輸出管理問題でも大きな問題となってきた。「第三国移転」は、各国の輸出管理制度において、規制対象や内容にズレがあった場合に生じる問題である。

 ただし、「第三国移転」が問題となるのは、移転を前提としていない場合のみである。国際共同開発や生産などにおいて、企業の活動拠点は多国間に及ぶ。武器や武器技術の移転は必要不可欠な措置となる。

 2001年の9・11同時多発テロ以降、特に2004年の国連安保理決議1540の成立によって、輸出管理に関する各国の法的枠組みの整備が進んだ。武器及び武器技術移転の合法性の法的な定義が明確になった。

 しかし、政策的に見ると、規制対象や内容が国際社会で共有されているわけではない。国ごとに規制の強弱が存在する。輸出管理や経済制裁を多国間で実施する場合に、管理の「弱い場所」から規制対象製品が流出するのは常識である。これをいかに防止するかが政策の焦点となっている。

 国際共同開発や生産のように、有志国が保有する技術を活用して先端兵器を開発する場合、各国の管理に漏れがあれば致命的な結果をもたらす可能性がある。ただ、輸出管理の整備及び執行は各国の主権に属するものであり、他国が関与するのは、たとえ同盟国とはいえ、困難である。例えば、相手国に遵守を求める上で、装備品全体に対する自国の部品や技術の構成比率に応じて規制を設け、一定の比率以上の装備品を自国の輸出管理の対象とする方法がある。これは、米国が武器輸出管理法に基づく自国の武器移転管理規則で実施しているものだ。これは国内法の域外適用にあたるため、どの国にも不人気だ。また、米国以外で採用している国は少ない。さらに、規制を回避するために「米国抜き」の傾向を加速させることにつながっている。

ホワイト国との共同開発がもたらす課題

 つまるところ、「目的外使用」と「第三国移転」を厳格に適用するには、相手国の措置を信頼することが最も合理的ということになる。つまり、国際共同開発や生産を構想する時点で、日本と同等の規制措置を運用している国――後に説明するホワイト国など――であれば、安心して武器や武器技術等の移転を実施することができる、という結論になる。

 藤村談話が出されることになった、防衛生産や調達をめぐる国際環境の変化要因の1つに、F-35の国際共同開発の例があることは言うまでもない。F-35開発は、軍種間の共同戦闘機の開発構想から始まった。コストの削減が目的だ。それまでは陸海空軍がそれぞれ別個の戦闘機システムを開発していた。F-35の開発は同時に、開発生産費の高騰を背景に、当初から国際共同開発を模索していた。

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