「田村耕太郎の「経世済民見聞録」」

絶頂期にあって苦悩するシンガポール

30年でGDP13倍!しかし国民の結束意識が懸念

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2012年1月18日(水)

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 企業の海外移転先、富裕層や高度なスキルを持つ人材の移籍先として、シンガポールが注目を集めている。日本では「シンガポールに行かねば時代遅れ」との切迫感さえただよう。一方、そのシンガポール政府が、そしてシンガポール人が自信を失いつつある。先日、シンガポールを訪問した際、政府高官や実業家などのエリート層からシンガポールの将来を危惧する声を多く聞いた。

 主に以下のようなものだ。
 「アジアが豊かになれば我々の存在意義はなくなる」
 「国民としての結束力が薄まっている」
 「今後は一党独裁の疑似民主主義は成り立たない。若い世代はリークワンユーのスタイルを受け入れていない」

 「シンガポールのパスポートと欧豪のパスポートが選択できるなら、我が子にはシンガポールのパスポートを選ばせない」

 エリート層が次々と私に漏らした。私には少し意外だった。成功の絶頂期にある国で、こういう的確な危機感をエリート層が持っていることは、この国の強みだとは思ったが…

45年で、アジアで最も裕福な国家をつくり上げた

 「シンガポールは快適である」。

 これは観光客はもちろん、シンガポールの国民やPR(永住権保持者)を含めたほとんどすべての滞在者が持つ実感である。安全でコンパクトで効率的。しかも豊か。ホテルもレストランも、カジノや動物園などのアトラクションもよく整備されている。1人当たりGDPも、今や4万3000ドルに達し、アジアにおいて断然トップを走る。円高でGDP値が膨れ上がる日本をも寄せつけない。

 シンガポールの快適さを最もよく表しているのが昨今の人口増だ。2005〜2010年の平均人口増加率は2.5%。ちなみに日本はマイナス0.07%だ。2000年からの10年間で見ると、103万人増加した。シンガポール統計局が2010年に実施した国勢調査によると、人口508万人のうち、64%に相当する323万人が国民。残りのうち、54万人がPR(永住権保持者)、131万人が一時滞在者となっている。

 シンガポールは、30年間で名目GDPを13倍にした。都市国家として、最高のモデルと言われる。それをコピーして成長しようという国や地域も多い。ロシア、中国、ドバイはもちろん、沖縄や大阪もシンガポールをお手本にしようとしている。半世紀に満たない45年で、アジアで最も裕福な国家をつくり上げた、シンガポールの生みの親、リークワンユー氏の手腕に敬意を表したい。

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著者プロフィール

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)

田村 耕太郎 前参議院議員、元内閣府大臣政務官(経済財政政策担当、金融担当)、元参議院国土交通委員長。早稲田大学卒業、慶応大学大学院修了(MBA取得)、米デューク大学ロースクール修了(証券規制・会社法専攻)(法学修士号取得)、エール大学大学院修了(国際経済学科及び開発経済学科)経済学修士号、米オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了。



このコラムについて

田村耕太郎の「経世済民見聞録」

政治でも経済でも、世界における日本の存在感が薄れている。日本は、成長戦略を実現するために、どのような進路を選択すればいいのか。前参議院議員で、現在は米イェール大学マクミラン国際関係研究センターシニアフェローを務める筆者が、海外の財界人や政界人との意見交換を通じて、日本のあり方を考えていく。

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