企業の海外移転先、富裕層や高度なスキルを持つ人材の移籍先として、シンガポールが注目を集めている。日本では「シンガポールに行かねば時代遅れ」との切迫感さえただよう。一方、そのシンガポール政府が、そしてシンガポール人が自信を失いつつある。先日、シンガポールを訪問した際、政府高官や実業家などのエリート層からシンガポールの将来を危惧する声を多く聞いた。
主に以下のようなものだ。
「アジアが豊かになれば我々の存在意義はなくなる」
「国民としての結束力が薄まっている」
「今後は一党独裁の疑似民主主義は成り立たない。若い世代はリークワンユーのスタイルを受け入れていない」
「シンガポールのパスポートと欧豪のパスポートが選択できるなら、我が子にはシンガポールのパスポートを選ばせない」
エリート層が次々と私に漏らした。私には少し意外だった。成功の絶頂期にある国で、こういう的確な危機感をエリート層が持っていることは、この国の強みだとは思ったが…
45年で、アジアで最も裕福な国家をつくり上げた
「シンガポールは快適である」。
これは観光客はもちろん、シンガポールの国民やPR(永住権保持者)を含めたほとんどすべての滞在者が持つ実感である。安全でコンパクトで効率的。しかも豊か。ホテルもレストランも、カジノや動物園などのアトラクションもよく整備されている。1人当たりGDPも、今や4万3000ドルに達し、アジアにおいて断然トップを走る。円高でGDP値が膨れ上がる日本をも寄せつけない。
シンガポールの快適さを最もよく表しているのが昨今の人口増だ。2005〜2010年の平均人口増加率は2.5%。ちなみに日本はマイナス0.07%だ。2000年からの10年間で見ると、103万人増加した。シンガポール統計局が2010年に実施した国勢調査によると、人口508万人のうち、64%に相当する323万人が国民。残りのうち、54万人がPR(永住権保持者)、131万人が一時滞在者となっている。
シンガポールは、30年間で名目GDPを13倍にした。都市国家として、最高のモデルと言われる。それをコピーして成長しようという国や地域も多い。ロシア、中国、ドバイはもちろん、沖縄や大阪もシンガポールをお手本にしようとしている。半世紀に満たない45年で、アジアで最も裕福な国家をつくり上げた、シンガポールの生みの親、リークワンユー氏の手腕に敬意を表したい。
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前参議院議員、元内閣府大臣政務官(経済財政政策担当、金融担当)、元参議院国土交通委員長。早稲田大学卒業、慶応大学大学院修了(MBA取得)、米デューク大学ロースクール修了(証券規制・会社法専攻)(法学修士号取得)、エール大学大学院修了(国際経済学科及び開発経済学科)経済学修士号、米オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了。







