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イラン危機、カギは「中国」「ユダヤ」「選挙」

元駐イラン大使が読むホルムズ海峡の行方

2012年1月20日(金)

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欧米による経済制裁。イランによるホルムズ海峡封鎖。イラン情勢が緊迫している。イスラエルによる先制攻撃はあるのか? 緊張を緩和する術はないのか? 元駐イラン大使の孫崎享氏に聞いた。

(聞き手は森 永輔)

:イラン情勢が緊迫している。今後、どのような展開が予想されるか?

孫崎:山場は2012年の7月だろう。EUが7月から、イランからの原油輸入を全面的に禁止する方向だ。EUが原油の輸入禁止に踏み切ると、米国の他の同盟国もEUに追随せざるを得なくなる。輸入禁止が強まれば、イランが軍事的な動きに踏み出す可能性が強まる。

 最も起こり得るシナリオは、イラン指導部の親衛隊の役割を持つイランの革命防衛隊が我慢できなくなり、軍事行動に出ることだ。ホルムズ海峡の封鎖まで行かなくても、1発の銃弾が軍事紛争の引き金になる可能性がある。

 ただし、11月の米大統領選が終了するまで現状が続けば、それ以降は緊張が収まるだろう。現在の緊張は、米国に敵対する国に対して強硬な姿勢を示そうとする候補者、ユダヤ・ロビーの活動など、米大統領選の影響をたぶんに受けている。

米大統領選に勝利するためには敵対国への強硬姿勢が欠かせない

:米共和党の大統領候補選びで、外交について、候補者から過激な発言が相次いでいる。

孫崎:サウスカロライナ州で行われたテレビ討論でタリバンへの対応を問われたミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は「世界中のどこにでも行き、彼らを殺す」と答えた。ニュート・ギングリッチ元下院議長も「『殺せ』ということだ」と応じた。「自分にしてほしくないことは他国にもすべきではない」と答えたロン・ポール下院議員はブーイングを浴びた。

 質問がイランに対してであっても、候補者らは同様の回答をしただろう。彼らに対抗するため、オバマ大統領もイランに対して強い姿勢をとることになる。

 米大統領選挙で重要な役割を果たすのはユダヤロビーの動きだ。彼らは多額の資金と大きな動員力を持つ。フロリダ州をはじめとするカギとなる州では、彼らの存在感が特に大きくなる。どの候補も、彼らを重視することになる。実際、共和党のすべての候補が最近イスラエルを訪れている。

 オバマ大統領はこの1月に、ジェイコブ・ルー行政管理予算局長官を主席補佐官に据えた。ルー氏は敬虔なユダヤ教徒だ。オバマ大統領は、予算に関する共和党との交渉における彼の力を買ったのに加えて、選挙対策の意味合いがあるだろう。ユダヤ系新聞はルー氏の就任を歓迎していた。

米大統領選を左右するユダヤ・ロビーの大きな力

:イスラエルにとって、イランが核兵器を持つことは大きな脅威になる。イランに対するユダヤの強硬姿勢が、米国のイラン政策に影響を与えているわけか。

孫崎:そうだ。イスラエルは以前から、イランによる石油輸出をなんとか止めたいと思っている。石油収入が、イランがパレスチナを支援する際の原資になっているからだ。ユダヤ・ロビーは現在を、それを実現する4年に1度のチャンスと捉えている。

 しかも、今回はやり方が巧妙だ。イスラエルによるイランへの先制攻撃が懸念されている。しかし、先制攻撃をすれば、イスラエルは国際社会から強く非難される。それを恐れてイスラエルは実行できないでいる。だが現在の情勢では、イランが先に軍事行動に出る可能性がある。仮にイスラエルが軍事行動で対抗しても、非難されることはない。

 ただし、イスラエルが本当に恐れているのは、イランによる核攻撃ではない。中東におけるイスラエルの核独占が崩れることだ。独占が崩れるとアラブ諸国が、パレスチナへの支援を強めかねない。アラブ諸国は今、イスラエルによる核の報復を恐れて、パレスチナへの資金、兵器の供与を控えている。

:選挙前はロビーが力を持つ。

孫崎:オバマ政権に圧力をかけているのはユダヤ・ロビーだけではないだろう。軍需産業も、その1つではないだろう。中東の緊張が高まれば武器が売れる。実際、サウジアラビアが米国からF15戦闘機を買うことを決めた。

:米大統領選挙以外に、中東に緊張をもたらした要因はあるか?

 中東の石油に対する米国の依存度が下がったことがある。米国内の油田やガス田の開発が進んだ。仮に中東で軍事紛争に起こっても、経済的な負の影響が以前よりも小さくてすむ。

 国際原子力機関(IAEA)のトップが交代したことも要因の1つだろう。前任のモハメド・エルバラダイ氏に比べて、現職の天野之弥氏は米国寄りに見える。IAEAが11月に発表した報告書は、イランが核兵器開発に向けて実験に取り組んできたと述べている。これが今回の制裁の引き金になった。しかし、私が見るところ、この報告書はイランの核兵器開発を裏付ける、新たで明確な事実を示してはいない。多分に政治的なものに見える。

 冒頭でお話したように、EUが米国に同調したことも大きい。しかし、深刻な金融危機にあるEUが、なぜこの時期に中東を不安定にするのか? 私には理解できない。

:イランの側に、欧米との緊張を助長する動きはあるか?

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「イラン危機、カギは「中国」「ユダヤ」「選挙」」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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