「ニュースを斬る」

コダック経営破たんに見る生き残りの法則

企業永続は、成長戦略を貫くトップの胆力で決まる

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2012年1月27日(金)

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 米名門企業のイーストマン・コダックが19日に米連邦破産法11条の適応をニューヨークの連邦地裁に申請したニュースは、企業が存続することの難しさをあらためて示すことになった。行き詰まった原因の1つは、デジタルへの対応が遅れたことにある。あまりに大きな成功を納めた銀塩フィルム事業。それだけに、新たな成長事業を生み出すことができなかったとの見方が多い。

 同じ銀塩フィルムメーカーとして一世を風靡した富士フイルムホールディングス(旧富士写真フイルム)。ただし、コダックとは違って医療事業や電子部品事業、ドキュメント事業などの成長事業を生み出すことができた。両社の違いはどこにあるのか?事業再構築に携わったトップの姿勢が決定的な差を招いたのではないか。

 マネジメントの専門家に話を聞きながら、企業が存続するための条件を探った。

 コダックは、米シティグループが設定した9億5000万ドル(約730億円)のつなぎ融資のうち6億5000万ドルの融資実行を許可されて当面の運転資金を確保した。しかし、「成長の柱」と位置づけるプリンター事業をベースとする経営再建の道のりは険しい。はたして再生できるのか、解体・清算の道を進むのか、決して予断を許さない事態にある。

 銀塩フイルム事業に代わる新たな成長事業を構築できなかった背景には、様々な原因が指摘されている。

 一橋大学の野中郁次郎名誉教授は「かつて自著『失敗の本質』で日本軍の組織を分析した。コダックは日本軍と同様に、過去の成功体験への過剰適応があったのではないかと思う。結果として知識破壊企業になった。一方の富士フイルムホールディングスは、まさに知識創造企業だ。モノづくりを捨てずに、銀塩フィルムで培った技術をベースに新しい事業ドメインを生み出すことができたからだ」と話す。

一橋大学の野中郁次郎名誉教授

 野中名誉教授は、銀塩フィルム事業に代わる新たな事業領域として設定した、ドキュメント、イメージング、インフォメーションの3つのソリューション事業がそれぞれ関係性を持っていることを高く評価する。いずれも銀塩フィルムで培った技術が生きているのだ。そのうえで、新しい事業の芽を育てていったのは、社長・CEOである古森重隆氏だという。

 「(社長の)古森さんは、フィルムの需要が激減した時に、1年かけて自社の技術を洗い直し、どういう製品に生かせるのか、じっくり考え抜いた。その結果、事業ドメインを明確に設定できた。重要なのは、知的構造改革を成し遂げたことだ。1万人規模のリストラを断行。構造改革を、単なるコスト効率を追求しただけでなく、知的な構造改革まで踏み込んで実行した。まさに事業ドメインに合わせた知の構造改革だと思う」

 コダックは、過去の知的資産(特許)を売って凌いでいこうという守りに入った。野中名誉教授は、成長戦略でなく、防御戦略を取ったことがコダックの敗因だと断ずる。

 「やはり、防御戦略では勝てない。後退しながらも、攻撃しないとイノベーションは持続しない」

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著者プロフィール

多田 和市(ただ わいち)

日経BPビジョナリー経営研究所長 兼 日経ビジネス編集委員

1985年 慶應義塾大学理工学部電気工学科卒、日本経済新聞社に入社。日経マグロウヒル社(現・日経BP社)に出向、日経エレクトロニクス編集部に配属。93年から日経ビジネス編集部で電機業界や流通業界などの企業経営を取材。99年日経ビジネス副編集長。2003年日経情報ストラテジー副編集長、2004年同編集長。2009年コンピュータ・ネットワーク局編集委員、2010年日経ビジネス編集委員。2010年12月から現職。
日経ビジネスや日経ビジネスオンラインでの執筆の傍ら、メディア企業としてのシンクタンクを立ち上げた。主要な研究テーマは、先端グローバル経営、経営改革手法、グローバル・リーダーの育成、グローバル・リスクの回避など。



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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、NBonline編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。

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