「社会を映し出すコトバたち」

「国民目線」に「上から目線」。「目線」って何だ?

弱者寄りの態度と自己顕示

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2012年2月14日(火)

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 人気アイドルグループ、AKB48が2011年12月7日にリリースしたシングル曲には「上からマリコ」という、ちょっと不思議なタイトルが付いています。「マリコ」とは、このシングル曲でセンターを務める篠田麻里子(愛称・まりこ様)のこと。また「上から」とは、彼女がAKB48の中で最年長かつ高身長であることに由来する、とされています。

 いっぽう、曲の歌詞が表現しているのは「年上の彼女に翻弄される彼氏」の姿。「年上の君は自由奔放で次の行動が僕にも読めない」「人混みの中、急に振り向いて君は(僕に)キスをせがんだ」(歌詞より引用)といった具合です。つまり、この曲のテーマは「上から目線」。彼女が上位で、彼氏が下位にある恋愛関係です。

 ところでこの「目線」という言葉。かつて日本語の語彙には存在しませんでした。れっきとした新語なのです。それゆえ中高年世代の中には「目線ではなく、視線や視点など従来から存在する言葉を使うべきだ」とお考えの方も、多いのではないでしょうか。

 さて、ここで問題提起です。この目線という言葉は、本当に視線や視点などで代替できるのでしょうか。仮に代替が不可能だとすると、理由は何なのでしょうか。今回の「社会を映し出すコトバたち」は「目線」について考えたいと思います。

目線=目を向ける方向 or ものの考え方

 まずは目線という言葉の意味を把握しましょう。今回は辞書ではなく、筆者独自の分類を使います。筆者の考えでは、目線の意味は4種類あります。

 第1の意味は「舞台・映画・テレビなどに出演する人がカメラや観客などに向ける視線」のこと。この意味での目線は本来、舞台や放送などの分野に限って使用する専門用語でした(筆者が発見できた初出は1978年の書籍「笑解現代楽屋ことば」)。この目線という専門用語が、おそらく番組出演者の発言などを通じて一般化しました。今日では、「カメラ目線」(カメラを見る視線)などの表現が一般的になっています。

 一般化した時期は分かりません。ただ新聞記事で目線の登場率が増えるのは、少なくとも1990年代以降のことです(以下に示したグラフをご参照ください)。この新しさゆえに「目線は日本語として正しくない」という主張が存在するわけです。

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著者プロフィール

もり ひろし (もり・ひろし)

新語ウォッチャー。1968年、鳥取県出身。電気通信大学を卒業後、CSK総合研究所(現CRIミドルウェア)で商品企画などを担当。1998年 からフリーライターに。新語を専門テーマとして、辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』で 「流行現象」のコーナーを担当



このコラムについて

社会を映し出すコトバたち

毎回、○○が付く言葉、○○に関連する言葉といった具合にテーマを設けて、そのテーマに該当する「コトバたち」を紹介していくコラムです。登場語 に共通する背景を探ることで「社会を映し出す」ことを目指します。題して「社会を映し出すコトバたち」。どうか気軽にお付き合いください。

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