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東京電力による電気料金値上げの意向に対して、企業の怨嗟が噴出している。同時に浮き彫りになるのが、東電への“距離感”がもたらす温度差。製品やサービスへの価格転嫁によって、「負のドミノ倒し」が始まる懸念も。

 「電気料金の値上げが行われたら、とんでもないことになる」と日本マクドナルドの原田泳幸・会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)は息巻く。

 東京電力は4月以降、企業をはじめとする大口需要家の電力料金を平均17%値上げする意向を示している。日本マクドナルドの試算では、FC(フランチャイズチェーン)店舗を含む全体への影響として「数十億円のインパクトは避けられない」という。「ただでさえ日本はインフラコストが高いのに、さらに電気料金が値上げされれば、国際競争力の低下は免れない」と原田CEOは憤りを隠さない。

 値上げの波紋はあらゆる業界に及ぶ。日本自動車工業会の2月の定例記者会見。志賀俊之会長(日産自動車COO=最高執行責任者)は「これだけは言わせてほしい」と自ら語り始めた。

 自動車メーカーが車両1台を組み立てる際の電力コストはざっと1万円。17%の値上げの影響を試算したところ、日産の栃木工場では1台当たり3500円増になるという。

 自動車業界は既に「現場では軍手を裏返して使う」(志賀会長)ほどのコスト削減に取り組んでいる。それでも大手の国内事業は軒並み赤字だ。志賀会長は「東電には我々と同様のコスト削減努力をしてほしい」と訴える。

立ち位置による温度差が露見

 NTT東日本30億〜40億円、NEC10億円、クボタ4億円…。各社が弾いたそろばんからは、年間で億単位のコスト増という試算が次々に挙がる。しかし、各社が憤る理由は値上げによる財務上の痛みだけではない。東電の説明不足に対する不信感が根底にはある。

 ホンダの池史彦専務は1月末の決算会見の席上で「我々は原材料費が上がったからといって、車両価格を値上げしたりはしない」と憤りをあらわにした。現在、ホンダは東電に対して「合理的な説明をしてもらえない限り、納得しない」と突き放した状況で、東電からの説明を待っているという。

 「そもそも値上げの理由がよく分からない」と話すのは、通信大手の担当者。「値上げの中に除染の費用などが入っているとすれば、それは国も関与しながら進めるべきこと。東電エリアのユーザーのみが負担するのはおかしい」といぶかる。

 一方、影響をほとんど受けない業界もある。4万を超える店舗網を抱えるコンビニエンスストア業界だ。今回、値上げの対象となるのは契約電力が50キロワット以上の高圧または特別高圧の需要家。コンビニ自体は大需要家だが、1店1店の規模は小さく、基本的に一般家庭と同様の低圧電力で東電と契約している。そのため多くの店舗で値上げを免れるもようだ。

 ただ東電は低圧電力の需要家、つまり一般家庭にも時機を見て値上げを要請する方針。コンビニ関係者の間にも安堵の雰囲気はない。

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