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公的債務と世代間格差の改善は消費を活性化させる

財政再建は経済成長を鈍らせるか?

2012年3月8日(木)

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 財政再建を考える際、常に議論になるのが、それが経済に与える影響である。その関係で重要な視点は、拙著『日本破綻を防ぐ2つのプラン』(日経プレミアシリーズ)で紹介した「ロゴフ仮説」である。ロゴフ仮説は、ハーバード大学のロゴフ教授らが指摘したもので、公的債務の過剰な増大は経済成長を抑制するというものである。

 具体的には、公的債務(対GDP)が90%を超すと、そうでない場合と比較して、その国の成長力は平均して約4%も低下する、とする。200年間に及ぶ44カ国の財政データを緻密に調査して導き出した結果である。

 この立場に立つと、財政再建による公的債務残高の縮減は、むしろ、経済成長を促進する可能性を持つ。

 同様に、世代間格差の改善も、経済成長を促進する効果を持つ。この理解には、「世代会計」から推計される「世代間不均衡」という指標と、経済成長率の関係を見るのがよい(図表1)。

 この「世代間不均衡」は、世代会計で「純負担」を推計し、「将来世代の純負担が(推計時点での)0歳児の何倍か」を示したものである(関連記事「サンデル教授に問いたい『搾取』の正当性」)。

 日本を例に説明しよう。図表1において日本の世代間不均衡は約170%を示している。世代間不均衡の値が大きいほど世代間格差は大きくなる。日本がこの図表の最も右側にあるのは、過重な負担が将来世代に押し付けられているからにほかならない――日本の公的債務残高(対GDP)は先進国中で最悪。さらに、「『暗黙の債務』の推計から議論を始めよ」の回で説明した「暗黙の債務」も将来世代にのしかかっている。そして、現行の政策により将来世代は(1995年時点における)0歳児の1.7倍もの純負担、つまり、ものすごい超過負担を押し付けられていることになる。

「純負担」の増大は消費を抑制する

 ところで、図表1は、日本以外の先進14カ国もプロットしている。この近似直線は右肩下がりの直線となっている。つまり、世代間格差が拡大するほど、経済成長率が低下する傾向がある。これは、暗黙の債務を含む公的債務が増加し、世代間格差が拡大すると、若い世代の消費の低下などを通じて、民間の経済活動を阻害し、将来の経済成長を低下させてしまうからである。逆に言うと、これは、世代間格差を改善すれば経済成長が高まる可能性を意味する。

 以上のメカニズムをもう少し踏み込んで考えてみよう。今、遺産・贈与のない個人の生涯予算制約式は以下の※式のようになる。

生涯消費 = 生涯賃金-負担(税・保険料)+受益(年金・医療・介護)
  = 生涯賃金-純負担
  = 手取り生涯賃金

※式

 ある個人が生涯に支払う「負担(税・保険料)」が1億円、老後に受け取る年金・医療・介護といった「受益」が0.8億円であるならば、生涯の「純負担」は0.2億円になる。この個人の生涯賃金が2億円の時、手取り生涯賃金は純負担0.2億円を除いた1.8億円となる。この範囲内で、現役期と引退期の消費計画を立て、生涯消費(1.8億円)する。

 ところで、この個人が次のように予測している場合はどうなるだろうか――現在の日本のように、公的債務が累増し、将来に支払う負担(税・保険料)が急増する、あるいは、老後に受け取れる年金が大幅に削減される。

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「公的債務と世代間格差の改善は消費を活性化させる」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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