• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

前首相、3・11の真相を語る

菅 直人 氏[前首相、民主党最高顧問]

2012年3月21日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 首相として震災復興を担ったが、対応の遅れや情報開示の問題を指摘された。打ち出した脱原発路線は、「延命策」「人気取り」と批判を浴びる。退任に追い込まれたが、今後も原発事故の再発防止に取り組むという。

菅 直人(かん・なおと)氏

1946年10月山口県生まれ、65歳。東京工業大学卒業後、市民運動家として活動。74年、市川房枝選挙事務長に。80年に社会民主連合から立候補して初当選。96年、厚生相として薬害エイズ問題で厚生省の責任を認めて謝罪。同年、民主党結成、97年に単独代表に。2009年の鳩山由紀夫内閣では副首相や財務相を務め、2010年に首相就任。2011年9月退任。現在は民主党最高顧問を務める。
(写真:村田 和聡)

 東日本大震災から1年、改めて犠牲になられた方のご冥福を祈るとともに、被災者やその地域の1日も早い復興を願ってやみません。

 それにしても、戦後最大の国難において、与党野党が協力し合う形が取れていない。本当に残念で、申し訳なく、その責任を感じている次第です。

 3・11のような惨事は、二度と起こしてはなりません。地震という天災に、原子力発電所の事故という人災が重なりました。あれは人災です。自然災害は防ぐことができません。しかし、原発は人間が作り上げたものです。震災で、原発における安全性への考慮が欠けていたことが明らかになりました。

 だからこそ、二度と起こさないように、問題を捉えて、解決のための政治を日本が世界に対して示していかなくてはいけません。

原発情報、隠していなかった

 福島第1原発がある場所は、建設前は海面から35mの高台でした。それをわざわざ、海面から10mまで土地を削って建てている。その事実が、東京電力の社史に、誇らしげに記されています。冷却するために、海水を効率的に取水して利用できるわけです。「先見の明があった」とも書かれています。ところが、この地域に50年、100年に1度、大津波が押し寄せてくることは、歴史を見れば分かることでした。

 驚くことに、ディーゼル発電機を一番低い場所に設置していた。なぜ、そこに置いたのか。聞くところによると、米ゼネラル・エレクトリック(GE)から製品を購入する契約を結んだ時、GEはコストを下げるため、直前に製作した原発の設計図をほとんどそのまま採用したそうです。そして、低い位置に電源を設置してしまった。その土地が持つ固有のリスクが、全く考慮されていなかったわけです。

 有事を想定した対策も、多くが機能しませんでした。象徴的な例がオフサイトセンターです。各原発の近くに設置されている施設で、非常時にはここに専門家が集まって対策を出すはずでした。これは原子力災害法で定められていたことです。しかし、今回の震災ではオフサイトセンターは全く機能しませんでした。

 地震による渋滞などの影響で、専門家が施設にたどり着けない。ヘリコプターを使って、数人が乗り込みましたが、電源は落ちているし、通信手段も断たれている。集まるべき人が集まらない。そうしているうちに放射線量が上がる可能性が指摘され、ビルを移動し、最後には福島県庁に移転しました。つまり、法律で「判断拠点」とされた施設が全く機能しなかったのです。

 厳しい事態を想定すべき状況なのに、それができていない。大きな理由は、原子力安全・保安院といった原発を監視・規制すべき組織が、原発を推進する立場にある経済産業省の管轄下にあったことにありました。以前は、科学技術庁の管轄だったのですが、橋本(龍太郎)内閣で文部省と合併した際に、科技庁にあった組織を経産省の部局と統合して、今の保安院ができたのです。そして、経産省という原子力を推進する官僚組織に組み込まれてしまった。

 日本では、停電でもすぐに電力が復旧するし、緊急電源も整備されているため、原発の電源問題は軽視されてきた。でも、米国は9・11の後に、テロによる電源喪失を想定して、何重もの対策を決め、日本の原子力保安院にも伝えたと言われています。しかし、現実には、原子力安全委員会や東電にきちんと伝わっていなかった。

 全電源喪失という重大な問題提起に対して、専門家も行政も電力会社も、いわば握りつぶしてきたのです。「起きないこと」として。

 情報伝達という問題で言えば、首相だった私にどれだけの情報が集まっていたのか、現在、検証が進んでいます。最近になって、当日の午後8時にはメルトダウンが起こっていたと言われています。しかし、当日に私がもらった情報には、そんな内容はなかった。東電は「燃料棒の上まで水がある」と言っていました。「だからメルトダウンはない」と。結果的には、その水位計自体が壊れていた。

 「分かっていたのに、情報を隠したのではないか」と批判されます。はっきり申し上げて、隠しておこうと思って抑えた情報は1つもありません。私まで上がってこないのです。

 「官邸に伝えた」という証言があるようですが、私まで届かない。官邸には多くの人が詰めており、その誰かに話しても、私に伝わらなければ、私としては判断のしようがない。放射性物質が大気中をどう流れるか予測するSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報も来なかった。

コメント81

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

「前首相、3・11の真相を語る」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

短期保有者のいいようにさせたら、中長期で保有したいと考えている株主はどうなるのか。

貝沼 由久 ミネベアミツミ社長