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日本の財政において「国債償還額(対税収)>1」が意味するもの

投資家が国債を購入しなくなる条件とは?

2012年4月9日(月)

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 政府は、5%分の消費増税を含む税制改革法案を閣議決定し、国会に提出した。だが、デフレ脱却が進まない現状を重視し、増税に否定的な意見も多い。実際、今回の法案提出を巡って、政権内での不協和音が目立った。今後は、野党の自民党・公明党との政治的駆け引きが加わる。政府・与党の舵取りは、さらには難しくなる。

 このような状況において、野田佳彦首相が「政治生命」をかけてまで、税制改革法案を成立させようとする意図や問題意識は何か。この背景に、少子高齢化の進展で累増する日本の公的債務があることは言うまでもない。

 今回のコラムでは、国債市場における「自己実現的期待」と「国債償還額(対税収)」の概念を利用して、どのような条件が成立する場合に、投資家が国債を購入しなくなるかを推測してみたい。

 財政の持続可能性に関する実証分析は、内外を含め多くの研究蓄積が存在する。例えば、Hamilton and Flavin(1986)やBohn(1998)などが研究である。これら実証分析による検証結果は様々である。ただし、これら実証研究は、過去の趨勢を見ているにすぎないことに留意する必要がある。すなわち、将来の動向が過去の趨勢と同じであれば、今後の財政が持続可能、または破綻してしまう、ことを確かめているにすぎないのである。

公的債務残高が基礎的財政収支の合計を超えると借金は返せない

 他方、最近は、不確実性を持つマクロ経済モデルを構築した上で、そのシミュレーション分析によって財政の持続可能性を検証する研究も増加しつつある。その場合、合理的な投資家が国債を購入しなくなる条件を、以下のように設定するケースが多い。

 現在の公的債務残高 >  現在から将来にわたる基礎的財政収支
(割引価値)の合計

…(1)

 (1)式の右辺の「基礎的財政収支」は、投資家が「予測」する「基礎的財政収支の最大値」を意味する。基礎的財政収支は税収と歳出(国債の利払い費を除く)との差額のこと。この「基礎的財政収支の最大値」は、政府が最大限の財政再建(増税・歳出削減)を行った場合に達成可能な基礎的財政収支と定義する。

 (1)式の右辺の合計よりも左辺の方が大きいということは、現在の公的債務残高は長期的に返済不可能であると、投資家が予測していることを意味する。(1)式の不等号が成立した時点で、合理的な投資家は国債を購入しなくなる。この(1)式の条件が興味深いのは、経常収支の値(赤字・黒字)とは全く無関係なことである。

国債残高を賄うため、今年はどれだけ国債を発行する必要がある?

 一方、経済学には、「自己実現的期待」(Self-fulfilling expectation)という概念が存在する。複数均衡(例:良い均衡と悪い均衡)のうちどの均衡が実現するかは、人々が将来をどのように予想するかによって異なる、とする説明だ。この概念に基づいて、投資家が国債を購入しなくなる別の条件を考察してみよう。

 ここでは、議論を簡略化するため、毎年の新発債と借換債を1年物国債とみなす(この簡略化は以下の議論の本質を妨げるものではない)。最近は毎年40兆円超の新発債と110兆円超の借換債を発行している。現実の財政運営では、これらの国債は様々な年限からなる。

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「日本の財政において「国債償還額(対税収)>1」が意味するもの」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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