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消費増税の議論の前に、まず日本経済の構造変化を直視しよう

もはや「家計」だけでは財政赤字を支えられない

2012年5月1日(火)

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 消費税率を巡る議論が盛り上がっているが、本稿では、日本経済の構造が1998年以前と以後ではかなり変わってしまったことの理解なくして、消費税論議をすべきではないということを示したい。現在の政府債務残高の水準から考えて歳出削減と増税によって、持続可能な水準に債務残高を減らすことは急務であり、消費税率引き上げに筆者は必ずしもネガティブではない。しかし、財政赤字の削減のロードマップを考えるにあたって、深刻な不況を回避するためには、財政以外からの需要の下支えが必要となることも明らかだ。

 80年代及び90年代前半と、90年代後半以降では、日本経済の構造は実はかなり異なってきている。80年代は家計の貯蓄超過を企業の貯蓄不足と財政赤字(及び経常収支黒字)が分け合う構造になっていたのに対して、90年代後半以降は、企業と金融機関の貯蓄超過を財政赤字と経常収支黒字が分け合う形となっている。もちろん、90年代後半以降も家計は貯蓄超過であるが、以前と比べて大幅に減少している。

 経常収支黒字は対GDP(国内総生産)でほぼ一定の割合を継続していることから、90年代後半を境とした大きな変化は、企業が80年代の貯蓄不足から90年代後半以降の貯蓄超過に転化したことだ。様々な理由が考えられるが、投資機会のファンダメンタルな不足に加えて、金融システムが90年代後半以降不安定になったことで、企業サイドが不測のキャッシュ不足に備え自前で対応しようという極めて防衛的な動機が大きいと考えられる。

 この現状の構造を所与とした場合、首尾良く何らかの方策で財政赤字の削減に成功した場合、その需要の減少は、恐らく、企業の貯蓄削減、すなわち企業の投資水準の大幅な上昇を伴わなければならず、それがない場合は深刻な不況になり、GDP自体の減少という調整過程を踏まなくてはならなくなるだろう。その意味で、これまであまり提起及び注目されていないものの、企業の行動の変化が財政赤字削減過程で極めて重要であることを本稿では強調したい。

増税論議をおさらいしてみよう

 ここで増税論議についておさらいをしておこう。現在、重要な政治日程の1つになり、今後の日本の政治を左右するような大きな争点となっている。経済学者の間でも、もちろん、増税の効果についての議論は活発になされているものの、議論の多くは、今回提案されている消費税増税が、現在の我が国の財政赤字をうまく減らすことになるのかどうかに集中している。

 増税反対の論拠は、名目GDPを上げる政策をとらずに消費税率を引き上げたとしても、結局税収は逆に減りかねないから、名目GDPを上げる政策としてまだ余地が大きい金融緩和を先に一段と行うべきで、それをやる前に先に消費税率を上げてしまっては、財政再建は結局達成できなくなってしまうのではないか、という主張である。確かに、金融緩和は2月14日の日銀の金融緩和策に市場が反応したことからも、諸外国に比べてまだ不十分であるという市場のコンセンサスが逆に明確になってしまった。また、歳出削減が増税の前に先行しないと有権者の納得は得られないというのも、もう1つの論拠として挙げられる場合は多い。

 一方、増税やむなしの論拠は、まず、政府債務残高がGDPの2倍に達するような状況は持続可能ではなく、一刻も早く、財政再建への道筋をつけるべく消費税率を上げるべきだ、というものだ。現在の債務残高水準では、日本国債が将来のある時点で売り込まれるリスクも潜在的に大きく、欧州財政危機と同様な危機が日本に起こる可能性だってある。また、高齢化の進展とともに、現在の税体系のままでは若年層の税負担が大きく、世代間格差の是正にも消費税率上げは妥当な選択だ、という主張だ。

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「消費増税の議論の前に、まず日本経済の構造変化を直視しよう」の著者

樋原 伸彦

樋原 伸彦(ひばら・のぶひこ)

早稲田大学ビジネススクール准教授

1988年東京大学教養学部卒業、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。世界銀行コンサルタントなどを経て、2011年から現職。米コロンビア大学大学院でPh.D.(経済学)を取得。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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