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沖ノ鳥島に対して中国が仕掛ける「法律戦」

海洋資源と安全保障のキースポット

2012年6月19日(火)

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 沖ノ鳥島――日本最南端に位置するこの珊瑚礁の島は、まさに絶海の孤島と呼ぶにふさわしい。東京都小笠原村に属しながらも本州から1700キロ南の太平洋に浮かんでいる。海洋進出がめざましい中国は、尖閣諸島だけではなくこの沖ノ鳥島も狙っている。ただし、奪おうとしているのは島の領有権ではない。「島」という法的な地位である。

 国連の大陸棚限界委員会が6月7日に、日本の大陸棚延長申請に対する勧告の要旨をホームページ上で公表した。同委員会は、排他的経済水域(EEZ)を越える大陸棚の延長を認定する機関だ。

 国連海洋法条約の加盟国は、海岸線から200海里(約270キロ)までの海域をEEZとして宣言することができる。EEZは国家の主権が及ばない公海であるが、沿岸国は漁業・鉱物・エネルギー資源を独占的に探査・開発することができる。これを主権的権利という。加えて、海底の地質や地形が連続している大陸棚においては、EEZを越えてさらに150海里、最大350海里(約650キロ)まで主権的権利を行使できる。ただし、権利を行使するためには、大陸棚限界委員会に科学的データに基づいて大陸棚の延長を申請し、承認を得る必要がある。

 日本政府は2008年11月に沖ノ鳥島や南鳥島を基点とする大陸棚の延伸を同委員会に申請した。同委は今年4月末に、沖ノ鳥島北方などにおいて、申請を一部認めると日本に伝えていた(関連記事「日本の海がさらに広くなった」)。勧告の要旨を公表したことで、これが公式のものになった。

 大陸棚限界委員会の勧告によって、日本はこれまで以上に広い大陸棚における主権的権利が認められることになった。沖ノ鳥島を基点とするEEZはおよそ40万平方キロで、日本の国土面積よりも広い。これらの海域では、レアメタルやマンガン、次世代の天然ガス資源であるメタンハイドレートなどの開発が期待されている。日本の資源・エネルギー戦略の観点から見て重要な勧告である。

 大陸棚限界委員会の勧告に対して、中国と韓国が猛反発している。といっても、尖閣諸島や竹島のように両国が沖ノ鳥島の領有権を主張しているわけではない。両国は沖ノ鳥島が国際法上「島」ではなく「岩」だと主張している。「岩」を基点にEEZや大陸棚を宣言することはできない。これを単なる外交上の嫌がらせと片づけてはならない。なぜなら、これは国際法を使った戦争だからである。

 日本語に「島流し」という言葉がある。かつては、離島を積極的に開発することはまれであった。しかし、離島が200海里のEEZや350海里の大陸棚の基点となり得るため、今日はそれを領有することが国家に多大な利益をもたらす。尖閣諸島や竹島、西沙諸島、南沙諸島などの無人の離島に対して、各国が重複して領有権を主張するのは、EEZがもたらすこの恩恵を得るためである。

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「沖ノ鳥島に対して中国が仕掛ける「法律戦」」の著者

小谷 哲男

小谷 哲男(こたに・てつお)

日本国際問題研究所研究員

同志社大学法学研究科博士課程単位取得退学、岡崎研究所等を経て、2012年4月から日本国際問題研究所研究員。日米関係と海洋安全保障問題を専門とする。「海の国政政治学」の確立に向けて奮闘中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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