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歴史が語る、公的債務がGDPの90%を超えた時に起こること

過剰な公的債務は経済成長を抑制する

2012年7月5日(木)

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 民主党・自民党・公明党の3党合意が成立し、6月下旬、一体改革関連法案が衆院を通過した。もし、このまま、一体改革関連法案が参院を通過すれば、消費税は2014年4月に8%、15年10月に10%に引上げられる可能性が出てきた。

 しかし、今回の改革は「止血剤」にすぎない。社会保障関係費は毎年1兆円以上のスピードで膨張する。現在の低金利のままでも国債の利払い費は10年間で約8兆円増加する。実際、内閣府が推計した「経済財政に関する中長期試算」(2012年1月)によると、消費税を10%に引き上げても、2020年度には基礎的財政収支が再び約17兆円の赤字になる。

 このため、さらなる財政・社会保障改革(「増税」「社会保障費の削減」)が不可欠であることは明らかである。日本の公的債務(対GDP)は200%に達し、先進主要国中で最悪の状態にある。もし追加の改革を行わない場合、公的債務が今後も膨張していく可能性が高い。

公的債務は、GDP比90%を境に、経済成長を抑制する可能性がある

 このような状況の中、最近、公的債務と経済成長の関係について、欧米を中心に興味深い研究が増えている。そこで、今回のコラムでは、その内容を簡単に紹介する。

 まず、最初に注目されるのは、『国家は破綻する-金融危機の800年』(日経BP社)で有名なハーバード大学のケネス・ロゴフ教授やメリーランド大学のカーメン・ラインハート教授らの研究である。この研究では、日本を含む先進20か国のデータ(1790年-2009年)を利用し、公的債務(対GDP)と実質GDP成長率の関係を分析している。

図表1:公的債務(対GDP)と実質GDP成長率の関係

公的債務(対GDP) 30%以下 30ー60% 60ー90% 90%以上
平均値 3.7 3.0 3.4 1.7
中央値 3.9 3.1 2.8 1.9
観測数 866 654 445 352

(出所)Reinhart and Rogoff (2010) “Growth in a Time of Debt”から筆者が作成

 図表1は非常に興味深い。公的債務(対GDP)が90%未満の場合、実質GDP成長率の「平均」は3.0-3.7%である。これに対して、公的債務(対GDP)が90%を超えると、実質GDP成長率の「平均」は1.7%にまで急低下する可能性を示す。また、実質GDP成長率の「中央値」も、同様の傾向が見てとれる。公的債務(対GDP)が90%以下の場合、実質GDP成長率の「中央値」は2.8-3.9%であるものの、公的債務(対GDP)が90%を超えると、実質GDP成長率の「中央値」は1.9%にまで急低下する可能性を示す。

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「歴史が語る、公的債務がGDPの90%を超えた時に起こること」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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