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復興の絆にほころび

補償なき水産加工会社の苦悩

2012年7月9日(月)

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 東日本大震災から1年以上が経ち、復興に向けてまい進するはずの三陸の漁港で、その絆にほころびが出る事象が起きている。

 宮城県石巻市の水産加工会社の役員が嘆く。「魚の奪い合いです。獲れる魚の量が極端に減るなかで、加工会社は会社を存続させるために必死になって魚をかき集めようとする。一致団結して復興を協議してきたが、今はそんな空気ではない」

 なぜ、魚が減っているのか。直接の原因は、今年の4月に改定されたある基準値だという。

 厚生労働省は今年4月、食品に含まれる放射性セシウムの安全基準を厳格化。500ベクレル/1kgから100ベクレル/1kgへと5分の1に引き下げた。国民の健康や安全、そして日本の食料品の安全性を海外に向けて訴えるという意味では、厳格化は仕方のないことだ。

 だが、その基準の変更が、被災地の水産業の復興に大きな足かせとなっているという。「漁師が魚を取らなくなった。500ベクレルの時は基準値をこえるものはほとんどなかったが、100ベクレルに引き下げられると、(基準値以上の数値が)出てしまいかねない。だから、取るのをやめてしまう。漁師はいいんですよ。休漁補償が出ていますから」(石巻の水産加工会社役員)

 東京電力は宮城県の漁業協同組合に対して、休漁補償を行っている。タラやヒラメ、スズキなど、基準値を超えるものが出やすい魚に関しては、漁を取りやめる漁師が少なくないという。

 水揚げされる魚は減る一方、設備などが復旧して操業を再開する水産加工会社は増えてきた。社員の給料を支払うため、必死に仕事を創ろうと経営者は躍起になる。結果、少ない魚を業者が奪い合って、価格が高騰する。

 一致団結、手を取り合って一緒に復興を目指す協調ムードは一変、熾烈な魚の奪い合いに変わってきた。仕事が少ない業者は、正社員に対して時給で給与を支払っているという。ただ、収入が不安定で、一日中働ける職場を求めて辞めてしまう人も少なくない。

 石巻にある別の水産加工会社は、冷蔵設備などを復旧する計画の先送りを検討し始めたという。

 理由を聞けば「1~2年もすれば、体力が持たずに倒産する加工会社が出てくるだろうから、その設備を買い取った方が安上がりで済みそうだから」。

 地域を挙げて強い水産業を復活させるはずが、相互に疑心暗鬼になり、潰し合いの様相も見えてきた。

震災から1年以上が経過した今も、瓦礫が残る石巻漁港(宮城県)

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「復興の絆にほころび」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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