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緊迫続く南シナ海問題、外交巧者・中国に一人勝ち許す

カンボジアを抱き込む中国に対し、クリントン長官が巻き返し図る

2012年7月20日(金)

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 アジア外交“夏の陣”がその幕を閉じた。7月の第2週、カンボジアの首都プノンペンで、東南アジア地域連合(ASEAN)を中心とする一連の会議――ASEAN外相会合、ASEANプラス3(日中韓)外相会議、ASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジア首脳会議(EAS)の外相会合――が相次いで開かれた。しかし、その閉幕は大きな不安を残すものとなった。南シナ海問題――南シナ海の島嶼の領有権をめぐる対立――で紛糾し、45年にわたるASEANの歴史の中で初めて、共同声明が見送られた。

 ASEANは毎年夏に一連の外相会議を主催する。世界各国の外相が集まり、アジア太平洋地域の安全保障や経済問題を議論する。これは、各国の首脳がASEAN議長国に集まる“秋の陣”の前哨戦となる。今年の“夏の陣”は、中国の一人勝ちであった。中国は巧みな“内政干渉”によりASEAN内部に亀裂を生じさせた。南シナ海での行動を法的に規制する「行動規範」の策定につながる動きを封じ、手足を縛られる事態を逃れた。

ASEAN国防大臣会議に焦点を当て実利を取る

 中国一人勝ちの兆候は1カ月前に表われていた。6月初旬、シンガポールにおいて、各国の国防大臣が集まるアジア安全保障会議(シャングリラ会議)が開かれた。そこに中国の梁光烈・国務委員兼国防部長(国防相)は出席せず、中国の存在感はなかった。一方、アメリカのパネッタ国防長官は、米海軍の艦船の6割を太平洋に配備することを宣言するなど、アメリカの「アジア重視」を強調した。米国による中国牽制が成功したかに見えた。

 しかし、梁国防部長はシャングリラ会議の直前に、カンボジアのプノンペンを訪れ、ASEAN国防大臣会合に出席していた。中国は同会合のメンバーでないにも関わらず、ASEAN議長国であるカンボジアの招きで出席し、相互信頼と協力を力説した。

 梁国防部長はカンボジア訪問に際して、同国に対して、軍事学校・病院の建設費として1億2000万元(約15億円)を供与すると発表した。また、4億2000万ドル(約334億円)の融資や航空機2機(中国製のMA60)の供与も発表した。カンボジアはこの融資を、ダム建設、国道の改良・改修などに使用する予定である。

 シャングリラ会議はメディアの注目度が高いが、しょせんは民間の研究所が主催する非公式なものにすぎない。中国はカンボジアをうまく取り込み、ASEAN国防大臣会合という公式な集まりで、自らの存在感をしたたかに示していたのである。

中比、中越の摩擦が激化

 ASEANと中国は2002年に「南シナ海行動宣言」に署名した。領有権紛争の平和的解決と、未占有の島における新たな建築物構築や居住を自制する、と各国が約束したものだ。しかし、この宣言に法的拘束力を持たせるための「行動規範」の策定は、この10年間、具体的な進展がない。

 それは、ASEAN加盟国の考えがバラバラで、中国につけいる隙を与えているからだ。南シナ海問題に関して、フィリピンとベトナムは、中国と激しく対立している。マレーシアとブルネイは、領有権を主張してはいるものの、中国との摩擦は少ない。さらに、南シナ海における領有権を主張していないインドネシア、シンガポール、タイ、ミャンマー、カンボジア、ラオスは中国の対立がない。

 加えて中国は、後に述べるように経済的影響力を行使して、ASEAN加盟国が南シナ海問題で中国に対抗するのを阻んでいる。中国とASEANとの貿易総額は3600億ドル(約28兆円)に及ぶ。

コメント3件コメント/レビュー

中国というのは,ウイグルやチベットを植民地化しているのを始めとして,シリアなどの問題でも安保理事会で拒否権を行使するなど,自分さえよければいいという価値観で動く史上最大の厚顔「ならず者国家」である.日本やフィリピン,ベトナムは,中国のこのような行動を世界中に宣伝すべきである.それこそNPO法人に内閣機密費を投入して宣伝すればよい.本来,このような国は,国際社会から「つまはじき」されてしかるべきであるのに,そうならないのは,大津の中学生イジメ自殺事件と同じ構図で,国際社会の倫理的敗北である.(2012/07/20)

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「緊迫続く南シナ海問題、外交巧者・中国に一人勝ち許す」の著者

小谷 哲男

小谷 哲男(こたに・てつお)

日本国際問題研究所研究員

同志社大学法学研究科博士課程単位取得退学、岡崎研究所等を経て、2012年4月から日本国際問題研究所研究員。日米関係と海洋安全保障問題を専門とする。「海の国政政治学」の確立に向けて奮闘中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中国というのは,ウイグルやチベットを植民地化しているのを始めとして,シリアなどの問題でも安保理事会で拒否権を行使するなど,自分さえよければいいという価値観で動く史上最大の厚顔「ならず者国家」である.日本やフィリピン,ベトナムは,中国のこのような行動を世界中に宣伝すべきである.それこそNPO法人に内閣機密費を投入して宣伝すればよい.本来,このような国は,国際社会から「つまはじき」されてしかるべきであるのに,そうならないのは,大津の中学生イジメ自殺事件と同じ構図で,国際社会の倫理的敗北である.(2012/07/20)

 国内政局・混乱に報道が集中する中、本記事は重要な記事です。指摘のとおり、日本外交はどこの政党が政権を取っても先験的・戦略的に継続性をもつて行わなければ国益は確保できない。民主党政権・野田内閣もこういう視点で頑張っていただきたい。ASEANが中国エゴで分断されることは日本の死活問題につながる。(2012/07/20)

昨今の中国の挙動を見ていても非常識にも程があると思う。たちの悪い中国に対し、各国が協力して手を打たないうと、アジアが危険な状態に追い込まれると思う。争いが起きると知的レベルの低い方に合わせざるおえなくなる。その前にレベルの低い中国に対処するべきだと思う。(2012/07/20)

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