「テザリング」。この専門用語が今、通信業界を揺るがす。屋外で、自宅で、スマートフォンをモデム代わりにする利用者が急増し始めた。怪物商品「iPhone 5」で解禁されることで、ネット利用の風景が変わりそうだ。

9月18日夜、米国サンフランシスコで開かれた米アップルによる「iPhone 5」の発表会から戻ったソフトバンクの孫正義社長は、成田空港から東京・汐留の本社に直行、休む間もなく会議に入った。
「ツイッターでもユーザーからの要望が強い。何とかテザリングを実現できないか」。前の週の14日、ソフトバンクとKDDIの両社はiPhone 5の料金を発表したが、KDDIがテザリングを解禁したのに対し、ソフトバンクは踏み込まず明暗が分かれた。
テザリングとは、動物につける綱「tether」から転じて、iPhone 5などのスマートフォン(高機能携帯電話)をパソコンにつなぎ、スマホの通信機能でインターネットに接続する方法。テザリングを解禁すれば、iPhone 5をモデム代わりに利用できるようになる。
通信回線の余力を考え、ソフトバンクはテザリングを見送っていた。だが孫社長の意志は固い。「3カ月下さい」。会議に同席したソフトバンクモバイルの宮川潤一CTO(最高技術責任者)はこう答えた。
屋外などでノートパソコンにデータ通信端末を接続したり、WiFiルーターと呼ばれる機器を近くに置いたりしてネットを利用する「モバイルインターネット」。これまではビジネスパーソンや一部の先進的な若者などが中心で、国内での利用者は約800万人前後にとどまると言われる。
iPhone 5でテザリングできるようになれば、この市場が飛躍的に伸びる可能性がある。
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