少子高齢化が急速に進む中、日本と同様に先進主要国でも、年金財政が厳しさを増している。これを受け、どの国の政府も年金改革を進めている。例えばデンマークやイタリアは、支給開始年齢を平均寿命に連動させ、長期的には69歳まで引き上げることを検討している。
このような状況の中、経済協力開発機構(OECD)は2012年6月上旬、年金に関する報告書(OECD Pensions Outlook 2012)を公表した。この報告書の冒頭にある編集記(Editorial)は、以下の文章で始まる。
(It may not feel like it, but today’s retirees are living through what might prove to have been a golden age for pensions and pensioners. Far fewer older people live in poverty than in the past: about a quarter fewer than in the mid-1980s. They can expect to live longer: 65 year olds today are projected to live 3.5 years longer than their parent’s generation. Today’s and tomorrow’s workers, in contrast, will have to work longer before retiring and have smaller public pensions.)。
上記の文章は、OECDがその加盟国の年金制度や将来の少子高齢化がもたらす課題に強い危機感を有していることを明確に示している。さらにこの報告書は「各国の政府は、公的年金の持続可能性を高める観点から、平均寿命の延びを勘案しつつ、年金支給年齢を引き上げる必要性」などを主張している。
日本も例外ではない。この連載コラムでは、これまで、事前積立による改革を主張してきた(「世代間格差は事前積立の導入で解決できる」)。もし、事前積立てが困難である場合、次善の策として支給開始年齢の大幅な引き上げは不可欠である。支給開始年齢の引き上げは、世代間格差を改善する観点からも有効だ。
そこで、今回のコラムでは、平均寿命と支給開始年齢との関係について、日本とOECD諸国を比較し、日本の年金支給開始年齢の現状について考察してみたい。
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