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ノーベル経済学賞、アルビン・ロス教授が起こした経済学の「革命」

まな弟子が明かす「マーケットデザイン」の社会貢献

2012年10月18日(木)

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 2012年のノーベル経済学賞は、アルビン・ロス米ハーバード大学教授とロイド・シャプレー米カリフォルニア大学ロサンゼルス校名誉教授に決まった。様々な国家の「制度疲労」が目立つ世界情勢の中、既存の市場や制度を分析する従来型の経済学と一線を画し、制度をどのように設計するかを究める「マーケットデザイン」の研究が脚光を浴びることになった。ロス教授のまな弟子、小島武仁・米スタンフォード大学助教授が本誌に緊急寄稿した。

 今回ノーベル経済学賞を受賞することになったアルビン・ロス教授の業績はゲーム理論、実験経済学など多岐にわたるが、今回の受賞理由となった「マッチング理論」およびその応用である「マーケットデザイン」は、まさに経済学の考え方を変える革命だと言っても過言ではない。

 マッチング理論は、様々な好みを持つ人々同士をどのようにマッチさせ、限られた資源をどのように人々に配分するかということを研究する理論である。「マーケットデザイン」は、マッチング理論を応用して実際の制度をどのように設計するかを研究する分野である(マーケットデザインの大きな応用に電波周波数帯などオークションへの応用もあるが、この記事では割愛する)。

 誤解を恐れずに言うならば、伝統的な経済学では市場や社会制度を既に「与えられたもの」としてその働きの分析に力を注いできたのに対して、マーケットデザインは経済制度を「設計するもの」と考えて、現実の制度設計を提案・実行しているのが特徴的である。つまり、発想そのものが伝統的な経済学とは異なる。

数学で不倫や離婚の危険がない男女のペアを探す

 マッチング理論の原点は、ロス教授とともに今年のノーベル賞を共同受賞したロイド・シャプレー教授が、数年前に亡くなったデビッド・ゲール教授とともに発表した論文に端を発する。彼らは男女の結婚をめぐる問題を「数学の問題」として設定して、男女間の「安定である」マッチングを探すアルゴリズムを発見した。

 ここでマッチングが「安定である」とは、「男性Aは現在マッチしている相手よりも女性Bのことが好きで、女性Bも現在の相手よりも男性Aのことが好きである」というような男女のペアがいないことを指す。もっと簡単に言えば、不倫や離婚の危険をなくす組み合わせを探す方法である。

 ゲール教授とシャプレー教授の理論は抽象的な数学理論だったのだが、この理論の経済学的な価値に気づき発展させてきた中心人物が、ロス教授なのである。1984年に発表した論文で、ロス教授は米国の医療界で、研修医が勤務を希望する病院と病院側の受け入れ希望をマッチングさせる「研修医マッチング制度」が使っていたアルゴリズムが、ゲール教授とシャプレー教授のアルゴリズムと本質的に同じ物であることを発見した。

コメント1件コメント/レビュー

マッチングと言えば、昔、入試制度を調べていた時に、結構、経済学者の仕事にぶつかった記憶がある。(アメリカや多くの国の大学院、あるいは、人事採用など)(線形原理の)競争選抜試験を行なわない場合、応募者(高校生)がレジュメをいくつかの希望先大学に送って、大学がこれはという応募者に入学(採用)打診をし、双方の意向が一致するときに決定に至る。こういう制度がうまく機能するのはどういう場合か、という詳細な研究があることを知った(不倫や離婚をしない夫婦の条件より複雑だったと思う)。選択嗜好性の問題の一種として扱われているかと思ったが、こういう議論と今回のノーベル賞が関わるらしい。我が国の「就活」も抽象化して把握すれば、こういう側面はある。現象を表面的になぞるのではなく、深く原理まで考えれば、ノーベル賞になるのではないか(経済学賞に限らず。平和賞と文学賞は別として)。(2012/10/18)

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「ノーベル経済学賞、アルビン・ロス教授が起こした経済学の「革命」」の著者

小島 武仁

小島 武仁(こじま・ふひと)

米スタンフォード大学准教授

2003年東京大学経済学部卒業。2008年米ハーバード大学から経済学博士号取得(Ph.D.)。米エール大学ポストドクトラルアソシエイトを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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マッチングと言えば、昔、入試制度を調べていた時に、結構、経済学者の仕事にぶつかった記憶がある。(アメリカや多くの国の大学院、あるいは、人事採用など)(線形原理の)競争選抜試験を行なわない場合、応募者(高校生)がレジュメをいくつかの希望先大学に送って、大学がこれはという応募者に入学(採用)打診をし、双方の意向が一致するときに決定に至る。こういう制度がうまく機能するのはどういう場合か、という詳細な研究があることを知った(不倫や離婚をしない夫婦の条件より複雑だったと思う)。選択嗜好性の問題の一種として扱われているかと思ったが、こういう議論と今回のノーベル賞が関わるらしい。我が国の「就活」も抽象化して把握すれば、こういう側面はある。現象を表面的になぞるのではなく、深く原理まで考えれば、ノーベル賞になるのではないか(経済学賞に限らず。平和賞と文学賞は別として)。(2012/10/18)

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ジェニー・ダロック 米ピーター・F・ドラッカー伊藤雅俊経営大学院学長