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「賦課方式vs積立方式」論争の誤解を正す

2012年11月1日(木)

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 常識が常に正しいとは限らない。通常は妥当と考えられる「常識」も、冷静に分析することで間違いが分かり、真実が発見されることがある。例えば、ガレリオは天体を精緻に観測し、「太陽が地球のまわりを回っている」という「常識」は間違いで、「地球が太陽のまわりを回っている」と指摘した。また、アインシュタインは特殊相対性理論を構築し、「時間の流れはどんな場所でも一定である」という「常識」は間違いで、個々の物体が進む速度によって時間の流れが異なることを明らかにした。物体が進む速度が光速に近づくほど時間の流れは遅くなる。

 このような「常識」の間違いが、「年金改革」の議論にも存在する。それが「賦課方式vs積立方式」の論争である。この論争の中で「常識」となっている間違いに、以下の3つがある。

(1)「二重の負担」が発生するため、積立方式へ移行することはできない。
(2)積立方式に移行すると、巨額の年金債務(例:750兆円)が顕在化する。これを処理するために、政府は巨額の国債を発行する必要がある。
(3)積立方式に移行すると巨額の積立金が発生する。このような巨額の資金を運用できない。

 以下、順番に誤解を解いていこう。

 まず(1)の常識である。現在の年金システムは、現役世代が老齢世代を支える「賦課方式」をとっている。少子高齢化により老齢世代が増加し現役世代が減少する中で、年金財政の持続可能性を維持しようとすると、世代間対立が起こりかねない――すなわち、 現役世代が支払う負担(保険料・税)を増加させるか、老齢世代が受け取る給付を削減するか、という対立である。このような対立を起こさないようにするための仕組みとして常に議論されるのが「積立方式」への移行である。各世代が、自らの老後のために自ら貯蓄する仕組みだ。

 しかし、この積立方式への移行は、いわゆる「二重の負担」と呼ばれる問題を引き起こす。というのは、賦課方式から積立方式に移行する期間の現役世代は、自らの老後のための積立(‘‘負担’’)と、老齢世代を支える‘‘負担’’の両方を請け負う必要があるからである。

 後者の負担はいくらになるか? 老齢世代への年金給付を削減しない場合、それは毎年の年金給付総額(直近では約50兆円=消費税換算で20%)に相当する。このような負担を現役世代が背負えるはずがない、というのが(1)の「常識」である。

 だが、この「常識」は間違っている。移行期において、老齢世代に年金を給付するのに必要な財源を、移行期の現役世代の負担のみで賄うことを前提としているからだ。

 例えば、移行期の年金財源を、国債を発行して一時的に賄う方法(以下「方式1」という)が考えられる。移行期の現役世代だけでなく、将来世代(場合によっては老齢世代)も含め、長い時間をかけて償却していくのである。

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「「賦課方式vs積立方式」論争の誤解を正す」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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