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細谷りそな会長の「遺言」(下)

銀行も社会の発展に貢献せよ

2012年11月9日(金)

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 細谷会長の口癖は「銀行の常識は世間の非常識」。この含意は、銀行界の横並びや権威主義、過去を否定するとともに、実は金融が新しい境地を開ける可能性を前向きに示唆するものであった。最終回は、細谷会長から銀行界に贈る言葉。

銀行は特別な産業という錯覚

 りそな会長に就任したとき、1つのメッセージとしていろいろなところに使っていたのが「銀行の常識、世間の非常識」。これはもう私自身が国鉄のころから「国鉄の常識、世間の非常識」という話を国鉄の中でよくしていたんですけどね。そういう意味で、独占とか、あるいは間接金融が非常に華やかりしころに恵まれた経営をやると、どうしても内部論理が優先して、世の中の目線、あるいはお客さんの目線が見えなくなる。

 国鉄が悪くなったのは、官の論理でやってきたがゆえに、その民間企業としてのマネジメントの原則を実行できなかった。国鉄のとき、予算主義で予算さえ消化すればという形で業務執行が行われた。JRになってから労働組合ですら、合理化に賛成して、合理化をすることによって利益を生み出して、その代わり自分たちのボーナス配分を増やしてほしいというインセンティブが働くんだと。

細谷英二(ほそや・えいじ)氏
1945年熊本県生まれ。68年東京大学法学部卒、旧日本国有鉄道入社。87年の国鉄分割・民営化作業に関わった後、東日本旅客鉄道に入り、2000年副社長。2003年から、りそなホールディングス会長に転じた。弊誌9月3日、10日、17日、24日号で、経営教室を連載。今月4日、病気のため死去した。(写真:丸毛 透)

 銀行はシャッターを昔からあんな早い時間にしめるなんてね。特に、私はJRで駅ビルなんかをやっていたから、国鉄時代は駅ビルに高い賃料を払ってくれるのは銀行だったので、結構積極的に入れたんですよね。ところが結局JRになってあらためて見渡したら、銀行の支店の入っている駅ビルは夕方から、人の流れが本格化するのではなく、もうテナントさんが泣くような、人の流れが止まっちゃうわけですよね。だから、世間のサービス業から比べるとずれているなと。

 それから国鉄時代に私は資金課というところで、銀行の窓口や証券会社の窓口のような仕事もやっていたので、すごい横並びだなと。お客様のニーズにまったく応えてない。とにかく、自分が恥をかかないように振る舞うことだけが関心事でね。銀行は、こんなことを高い給料をもらっている人がやっていてという思いで見ていました。

 銀行は常に特別な産業だという思いがあります。その分だけ規制をされているので、そういう意味では、経済社会における役割というのはものすごく大きいと思いますよ。それだけ規制があるというのは、それだけ重要な役割をやっている。その延長線で何か自分たちに特権があるみたいな錯覚につながっていく。

 だから、世界的に金融機関が高い報酬をもらうと、みんながこんなにという思いで見ている。日本の場合は、その報酬を見たら、そんな恵まれているわけじゃないけど、昔は恵まれていた数字だったと思うんです。特別な産業だという思いはものすごく強いと思いますよね。

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「細谷りそな会長の「遺言」(下)」の著者

馬場 燃

馬場 燃(ばば・もゆる)

日経ビジネス記者

日本経済新聞社の経済部などを経て、2012年4月から日経ビジネス記者。電機・IT業界を担当している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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