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「賦課方式VS積立方式」論争の誤解を正す(2)

数字で示す事前積立ての効果

2012年12月7日(金)

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 前回のコラム「『賦課方式VS積立方式』論争の誤解を正す」で、日本の年金は、現行の枠組みのまま、積立方式に実質的に移行できることを説明した。

 年金制度が、単純な賦課方式で、年金給付の水準を一定に維持する場合、少子高齢化の進展に伴い勤労世代の負担は上昇する。これに伴って、世代間格差も拡大する。ただし「事前積立」を導入することで、世代間格差を改善することができる。具体的には、賦課方式年金に積立勘定を補完的に導入することで、勤労世代の負担を平準化する。今後の年金改革の成否を握る重要な仕組みである。

 ただ、前回の説明では、具体的なイメージがわかない読者も多かったのではないだろうか。

 そこで今回は、簡易な数値例を使って、事前積立の仕組みを解説する。議論を分かりやすくするため、第1世代(1930年生-1969年生)、第2世代(1970年生-2009年生)、第3世代(2010年生-2059年生)の3世代だけが登場する経済を考える(注:カッコ内の「生年」は世代のイメージを高めるためのもの)

図表1:賦課方式年金

世代 世代人口 給付 負担 純便益
第1世代 1 300 300
第2世代 3 300 100 200
第3世代 3 300 -300

(注)本文の計算を簡略化するため、「給付」「負担」「純便益」は割引現在価値で評価した値とする。

 現在は3人の勤労世代で1人の引退世代を支えている。2050年頃には1人の勤労世代が1人の引退世代を支える必要がある。このため、第1世代の人口を1人、第2世代の人口を3人、第3世代の人口を3人とする。

 このような設定で、第1世代が引退世代、第2世代が勤労世代の時、政府が突然、公的年金(=300)を導入するケースを考える。第1世代は、保険料・税の負担なしで300の年金給付を受け取ることができる。したがって、第1世代の純便益(=給付-負担)は300となる(図表1)。この時、公的年金が賦課方式であると、3人の勤労世代(第2世代)で1人の引退世代(第1世代)を支える構図となる。300の給付を賄うため、第2世代は1人当たり100を保険料または税の形で負担する。

 次に第2世代が引退世代となり、第3世代が勤労世代となった時を考える。第2世代も、第1世代と同様には300の年金給付を受け取る。この場合、第2世代の純便益(=給付-負担)は200(=300-100)となる(図表1)。この時、第3世代は1人で、第2世代1人を支える必要がある。300の給付を賄うため、第3世代は300を負担する。

 最後に、第3世代が引退世代となる時を考える。第4世代はいないから、第3世代は年金給付を受け取ることができない。第3世代の純便益(=給付-負担)は▲300(=0-300)となる(図表1)

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「「賦課方式VS積立方式」論争の誤解を正す(2)」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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