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2%インフレ実現でも消費税率32%

社会保障費の削減と増税が不可避~現実直視から経済再生は始まる

2013年1月7日(月)

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 つい最近、2010年度の社会保障給付費が100兆円の大台を突破したニュースが話題となった(図表1)。理由は、急速な高齢化の進展に伴い、年金・医療・介護といった給付を受け取る老齢世代が急増しているためである。

図表1:社会保障給付費などの推移
出所:社人研「社会保障給付費」(平成19年度)および厚労省「社会保障の給付と負担の見通し」(平成18年5月)から作成

 一方、その財源を支える勤労世代は減少する傾向にある。このため、社会保障財源の一翼を担う保険料収入が給付の伸びに追いつかず、その不足分を国や地方から移転する税などの公費で賄っている。この公費分に相当する社会保障費は毎年1兆円超のスピードで膨張している。税収は十分でないことから、公費の一部は借金(財政赤字)で賄う格好となっている。

 公費の一部を借金で賄っている事実は、「現在の社会保障は『賦課方式』――勤労世代から老齢世代への所得移転政策である――を採用している」とする通常の説明が不正確であることを意味する。もし、「完全な」賦課方式であれば、社会保障の財政収支(=税・保険料収入-給付)は毎年均衡するため、財政赤字には全く影響しない。しかし、現在の社会保障システムは「完全な」賦課方式でなく、その財源の一部を、将来世代への「ツケ先送り」である財政赤字で賄なっている。

 しかも、財政赤字は拡大する傾向にある。約90兆円の歳出の半分(約44兆円)を財政赤字で賄う状況だ。200%に達しつつある日本の政府債務(対GDP)は、現状のままでは、引き続き拡大していく可能性が高い。

 2012年8月上旬の通常国会で、消費増税を含む「社会保障・税一体改革法」(以下「消費増税法」という)が成立した。これにより、消費税率が2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げられる可能性が高まった。しかし、この消費増税は「止血剤」に過ぎず、社会保障費の削減や増税といった「痛み」は不可避である。

2%のインフレがあっても消費税率は25%を超える

 というのも、増税による増収分を考慮しても、財政赤字は今後10年間で50兆円以上(現在は約44兆円)に拡大する計算になるのだ。今回の5%増税で調達できる財源は約12兆円(消費税率1%分を約2.5兆円で換算)。毎年1兆円超のスピードで膨張する社会保障費を抑制しないと、今後10年間で社会保障費は約10兆円以上増える。さらに政府債務の急増により、現在約9兆円の利払い費は、金利水準が変わらなくても、今後10年間で約17兆円(約8兆円増)に膨らむ。

 これに対して、2%のインフレが実現できれば、(インフレ税という痛みを除きそれ以外の)痛みを伴うことなく、日本経済は救われる――このような見方が2012年末の選挙戦の頃からメディアを駆け巡った。だが、これは「幻想」である。新年早々から、このような厳しい寄稿をしたくはないが、財政赤字が拡大するのが「現実」だ。新政権が本格的に動き出す今だからこそ、多くの国民が認識を深める必要がある。

 以下、この点を、米アトランタ連邦銀行のブラウン氏と南カルフォルニア大学のジョーンズ教授の試算を参考に考察する。

 まず、2%インフレの効果を把握するためには、それが実現しなかったシナリオ(以下「ベース・シナリオ」と呼ぶ)と比較する必要がある。

 ブラウン氏らはベース・シナリオとして、(1)毎年1兆円超のスピードで膨張する社会保障費を抑制せずに、(2)財政安定化のため、消費税を2017年に一気に引き上げる場合、その最終税率は33%になると推計している。なお、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のハンセン教授らは最終税率について35%と推計している。一橋大学の小林慶一郎教授と筆者の共著『日本破綻を防ぐ2つのプラン』(日経プレミアシリーズ)では、2050年ごろの消費税率を約31%と推計(機械試算)した。

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「2%インフレ実現でも消費税率32%」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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