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地雷を踏まなかった日米首脳会談

巧みなメディア戦略と周到なメッセージ

  • 渡部 恒雄

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2013年2月27日(水)

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 安倍・オバマの初顔合わせとなる首脳会談が、2月22日に行われた。一言でいえば、米国側の期待のツボを心得たメディアやシンクタンクでの的確な情報発信と、周到な事前準備の成果が出た幸先のよい首脳会談と言えよう。

 安倍晋三首相は、日米同盟と自由貿易体制に利益を見出す日本の保守政治の伝統を受け継いでいる。バラク・オバマ大統領との会談でも話題となった祖父の岸信介首相(当時)は、アイゼンハワー大統領(同)と会談し、日米の共同防衛の明文化で対等な関係を強めた1960年の安保条約改定により、日米同盟の長期安定に道を拓いた。これは有利な遺産だが、安倍首相は保守派ゆえの地雷も抱えている。

 それは、日本の過去の戦争責任に関する後ろ向きな姿勢について、米国のリベラル派から懸念を持って見られていることだ。民主党のオバマ政権は、大統領本人の政策志向もあり、女性や少数派(マイナリティー)の権利を重視するリベラル政権である。従軍慰安婦などの歴史認識問題では、日本に厳しい目を向ける可能性があった。昨年に再選を果たしたオバマ政権の支持層は、男性より女性、白人より少数派(マイナリティー)が多く、韓国系が多いアジア系アメリカ人からも大きな支持を得ている。

巧みなメディア戦略

 世界的に影響を持つニューヨークタイムズ紙は安倍首相に「歯に衣着せないタカ派」(outspokenly hawkish)というレッテルを貼っている。しかし、今回のワシントンでのスピーチや首脳会談において、安倍首相は、日本が過去の侵略を否定するようなメッセージはまったく発しなかった。中国に対する発言も、石原慎太郎前東京都知事が口にするような侮蔑的で好戦的なものとはほど遠い、現実的なものであった。

 尖閣問題について、オバマ政権が同盟国・日本に対して配慮を示しているのとは異なり、ニューヨークタイムズは中国寄りの姿勢が目立つ。だが、彼らが「期待」するような安倍首相の「タカ派」発言はまったくなかった。この点について、より中立的なワシントンポストの独占取材に応じたことや、そこで掲載された内容が穏健なものであったことなど、安倍政権のメディア戦略は的確である。

 唯一、ワシントンポストの記事で、中国の愛国教育の中に反日の要素があることを安倍首相が指摘した部分について中国政府が問題視した。しかし、菅義偉官房長官は、すかさず、安倍首相はインタビューの中で中国が近隣諸国との対立を望んでいるとは言っていないし、我々は中国との戦略的互恵関係を重視していると答えている。実際、オバマ大統領との首脳会談で、尖閣問題で冷静に対処する方針を共有したことは、日中の偶発的紛争への巻き込まれを懸念する米国に対しても、中国への関係改善のシグナルとしても重要だろう。

 北朝鮮の核開発についての日米の連携も重要なテーマだった。米国は北朝鮮が再度の核実験を強行したことを受けて、国際的な制裁を強めようと動いている。米国の喫緊の安全保障の課題は、これ以上の核兵器の拡散を防ぎ、米国をターゲットにした核テロを未然に防ぐことだからだ。北朝鮮が引き起こしかねない地域の混乱の可能性を踏まえると、米国の同盟国である日本と韓国が、竹島問題で反目しあっていることは、オバマ政権にとっては大きな懸念材料である。したがって、安倍首相が歴史認識に深入りせずに、冷静に韓国との関係改善を進めていることは、米国の利益に叶うことでもある。

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