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英語の「Hibachi」は日本語の「火鉢」ではない

意味の変化は「お互い様」

2013年5月14日(火)

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 パソコンゲームに「tycoon(タイクーン)」と呼ばれるジャンルがあります。別の言葉で表現すると「経営シミュレーションゲーム」のこと。動物園、鉄道会社などの企業経営を楽しむゲームを指します。

 もう随分昔のことですが、筆者はtycoonという英単語が日本語由来の言葉であることを知り、大変驚きました。実はtycoonは、日本語の「大君(たいくん)」を語源とする言葉。江戸時代に、日米の外交ルートを通じて「徳川将軍」を意味する「大君」が英語に流入したのです。英語のtycoonは現在、主に「ビジネスの成功者・有力者」を意味するようになりました。それゆえ「経営シミュレーションゲーム」の題名には、よく「tycoon」という単語が登場するのです。

 それにしても、日本語では「将軍」や「君主」などを意味した言葉が、英語では「ビジネスの成功者」を意味するようになったのだから、面白いものです。このように日本語から英語に流入した言葉の中には、「流入とともに意味が変わってしまった言葉」が存在します。

 そこで今回の「社会を映し出すコトバたち」は「英語に流入したうえ意味が変わってしまった日本語」を特集してみましょう。紹介するのは「布団」「火鉢」「菜っ葉」「薩摩」の4つ。それぞれ英語では何を意味するのか、紹介していきます。

 なお本稿は、バックナンバー「英語社会から見た日本を『ニホンゴ』で探る」の続編、「英語化した日本語シリーズ」の第2弾となります。

Q1:布団(futon)は英語で何を意味する?

 さっそく問題です。英語で「futon(布団)」は何を意味するでしょうか。

 本稿を通じてみなさんに試してみていただきたことがあります。出題する英単語を「画像検索」してほしいのです。例えばグーグルの場合、まず普通に「futon」でウェブ検索を行うと、画面上部に「ウェブ」「画像」「地図」「ショッピング」などの選択項目が表示されます(注:表示項目の種類や順番は、検索語によって異なる)。このうち「画像」をクリックすると、「futon」がどんなものか「画像」で確認することができます。

 さて実際に「futon」を検索して、少し様子がおかしいことに気づいた人が多いのではないでしょうか。日本語の話者がふつうにイメージする「布団」は「綿や羽毛などが中に入っている袋状の布」だと思います。しかしながら「futon」を画像検索すると、なぜか「ソファー」がたくさん表示されるのです。

 米国を代表する辞書「メリアムウェブスター辞書」(Merriam-Webster)のオンライン版(以下ウェブスター)を調べてみましょう。同辞書のfutonの項目には、次のような語釈が載っていました。「a usually cotton-filled mattress used on the floor or in a frame as a bed, couch, or chair」(通常は綿が入っているマットレスのこと。床に敷いて用いるか、ベッド、カウチ、椅子のフレームと併せて用いる)。この語釈のうち「床に敷く」意味は日本でもおなじみです。でも「ベッド・カウチ・椅子」と一緒に使うことに馴染みはありません。

 実は英語のfutonは「ベッドとしてもソファーとしても使える家具」を意味します。つまり寝るときはベッドとして、昼間生活するときにはソファーとして使える家具です。ただしソファーベッドとは異なり「フレームとマットレス(つまり布団)が別々になっている」のが特徴。必要に応じてフレーム部分の形を変更したり(ソファーの背もたれ部分を立てたり平らにしたりなど)、フレームの形状に合わせてマットレスを敷き直したりして、ベッドとソファーを使い分けるのです。

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「英語の「Hibachi」は日本語の「火鉢」ではない」の著者

もり ひろし

もり ひろし(もり・ひろし)

新語ウォッチャー(フリーライター)

CSK総合研究所を経て、1998年から新語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』(自由国民社)で「流行現象」のコーナーを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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