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「薄熙来公判は権力闘争」という見方の危うさ

中国の根源的矛盾が吹き出している

2013年8月30日(金)

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 8月22日から始まった薄熙来裁判は、26日に結審した。山東省済南市の中級人民法院(地方裁判所)で開かれた公判は、中国版ツイッター微博(ウェイボー)で公開された(リンクはこちら)。

 気になるのは、薄熙来裁判を「権力闘争」とする分析が多いことだ。

 確かに、無関係な第三者としてはそのほうが理解しやすいし、面白い。だが中国は日本の経済や外交にとっては無関係とは言えない国だ。中国の真相を理解した方が日本の利益に適っている。「権力闘争」と矮小化して面白がっていると、中国が抱える根本的矛盾が見えなくなる。

 薄熙来裁判が中国の何を物語っているのかを、本稿で指摘したい。

中国では裁判は建国過程から公開

 日本を含め各国のメディアは薄熙来裁判を「異例の公開」として注目した。が、中国では裁判の経過を外部に見せることは決して珍しいことではない。

 中国(中華人民共和国)が誕生する過程で、中国共産党側における裁判は民衆が公開で行い、公開処刑にしていた。民衆に裁かせたのは、民衆に権限を与えて中国共産党側について戦わせ、革命を勝利に導きたかったからだ。民衆から司法に移ったのは建国後だが、それでも公開処刑。筆者がまだ小学生だった時代は、その公開処刑場に行かされたものだ。そのほとんどは「教育のための見せしめ刑」だった。毛沢東の言うことは絶対だと信じさせ、震え上がらせるためだった。

 日本では法廷内の撮影は禁止されている。被告人が入廷する前の裁判官等の「言葉を発しない」映像が許されるのみで、被告人が入廷したあとは、スケッチと文字化した情報のみの公開が許されている。

 ところが中国は違う。
 公判中の被告の苦しげな表情や後悔や反省の言葉、それらが中央テレビ局CCTVで放映される。重要人物でない限り全行程を生中継することはないが、一部の収録は小さな犯罪でも、それが社会の「教育(見せしめ)」に役立つと判断されれば、やはり放映される。

 典型的な生中継は文化大革命(1966年~76年)を扇動した罪により裁かれた毛沢東夫人・江青(ジャンチン)の裁判だ。

 1980年11月、北京にある最高人民法院(最高裁判所)の特別法廷には880人もの傍聴者が入りテレビ中継した。その中には300名以上の記者がいて、自由に撮影し報道することが許された。まだテレビが普及していない中国において、人民はテレビを観ることができる場所に殺到したものだ。

 90年代半ばになるとテレビの普及率が広まってきたので、裁判の全行程の生中継が流行ったことがある。特に1996年には広東省広州市中級法院(地裁)における法廷の模様が連続三日間にわたりテレビで生中継され、98年には北京市第一中級人民法院における公判が生中継され話題を呼んだ。

 その後、生中継が人民の感情を逆に煽動する側面が批判されて、完全な生中継は今では無くなった。

 ただし、昨年行なわれた薄熙来の妻・谷開来の公判の一部は画像で収録されてCCTVや新華網(新華通信のウェブサイト)が盛んに動画としてネットを賑わした。

 このように公開は異例ではないが、だから中国の裁判は透明度が高いか、と言えばもちろんそうはいかない。薄熙来裁判の法廷には16名の記者の入廷が許されていたが、個人が取得した情報は外部には流してはならないことになっている。つまり、当局が流す情報以外、自由発信は許されない。

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「「薄熙来公判は権力闘争」という見方の危うさ」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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