和食がユネスコの「世界無形文化遺産」に登録される見込みだ。世界無形文化遺産は、いわゆる「世界遺産」と並ぶユネスコの遺産事業の1つだ。12月上旬の政府間委員会で正式に決定する。食に関係する世界無形文化遺産は、フランスの美食術や地中海料理、メキシコの郷土料理など既に4件が登録されている。世界的に日本食ブームであることを鑑みれば、和食の登録は「当然」と言えるだろう。
世界一の食大国、日本
フランスの「ミシュラン・ガイド」に掲載されている日本の三ツ星店は首都圏で15軒、関西圏14軒、北海道4軒、広島1軒の計34軒。うち28軒が寿司や天ぷらなどの「和の名店」となっている。これはミシュランの本場、フランスの27軒を凌ぐ数で、名実ともに和食が「世界一の料理」であることを示している。我々日本人は、先人たちが育んできたこの良き食文化を誇りに感じるべきであろう。
だが、世界無形文化遺産登録を手放しで喜んでいる場合ではない。和食は絶滅の危機に瀕している。
「そんな馬鹿な。我が家は和食主義だし、近所に和食レストランは無数にある」と主張する人もいるだろう。しかし、「絶滅」の兆しは目に見える形で現れてきている。
昔の日本料理は「立春、処暑、秋分、冬至」など、いわゆる二十四節気ごとに、その節気を反映した料理を出していたものだが、時代が流れ、こうした二十四節気への取り組みは店によって濃淡がある。
今、名だたる日本料理店でも、供する料理は季節替わりか、頑張って月替わりがせいぜい。冷凍の技術や物流の発展により、あらゆる食材を1年中、いつでも手に入れることができる恵まれた時代であるにもかかわらず、である。

東京で出される京料理
だが、よくよく考えてみれば、保存・流通の発達が、逆に料理人の季節感覚を狂わせ、ご当地感を喪失させているのかもしれない。
例えば、京都の初夏を告げる「鱧料理」。鱧は、皮一枚を残し、一寸(3cm)で25切れ以上の包丁を入れる「骨切り」が有名。かつては京都の料理人の「専売特許」であった。しかし、今や東京の料理店はおろか、スーパーのお惣菜売り場でも並ぶようになっている。
同じく、「さば寿司」や「ぐじ(甘鯛)」なども、そもそも京料理だったと言われなければ、気付かない人も多いだろう。
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