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軽減税率の導入で消費税の逆進性は解消しない

財政再建や世代間格差の是正に禍根を残す

2013年12月12日(木)

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 いま与党内(自民党と公明党の間)で、生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率の導入を巡る議論が紛糾している。公明党は、与党が12月中旬に決定する予定の2014年度税制改正大綱において「消費税率を10%に引き上げる段階で軽減税率を導入することを明記する」ことを要求している。これに慎重な自民党との間の攻防である。

 軽減税率の導入を要求する主な目的は、消費税が持つと言われる「逆進性」(=所得の低い人ほど税の負担率が高くなる性質)を緩和することにある。しかし、軽減税率を導入してもこの目的を達成することはできない。むしろ、将来の財政再建や世代間格差の是正に禍根を残す結果に終わる可能性が高い。その理由を今回のコラムで説明しておきたい。

 まず、軽減税率の導入は、低所得者の負担軽減対策としては有効性が低いという事実を確認しておこう。この事実は以下の図表1から明らかである。この図表は、全国消費実態調査のデータを利用し、世帯の年間収入を10分位に分解した場合、食料品に対する消費税をそれぞれがいくら負担したかを試算したものである(注:消費税率5%を想定)。

図表1:食料品に対する消費税負担(世帯年収階級別)

 図表を見れば、世帯収入が増加(第1分位→第10分位)するに従い、食料品に対する消費税負担額も上昇していることが一目瞭然である。低所得の世帯はそれに見合った安価な食料品を購入する一方、高所得の世帯は高級な食料品を購入している――この状況を考えれば当然の結論と言える。

 このような状況で、仮に消費税率を10%に引き上げる際、食料品については軽減税率を適用して税率を5%に据え置くと、これによる各世帯の負担軽減額は大雑把に言って、図表1に示された消費税負担額(5%ベース)に相当することとなる。すなわち、最も所得の低い第1分位の負担軽減が約1.9万円なのに対し、最も所得の高い第10分位の負担軽減は約5.3万円となる。

 つまり、低所得者の負担を軽減するための措置として導入したはずの軽減税率は、結果的には所得の低い世帯には小額の給付を、高所得者世帯には高額の現金給付を行ったのと同じ効果をもたらすことになる。本来の趣旨とは矛盾する、あるいは極めて非効率的な政策ということになる。

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「軽減税率の導入で消費税の逆進性は解消しない」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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