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アメリカから見る、防空識別圏設定問題からの教訓

  • 片桐 範之

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2013年12月13日(金)

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片桐範之(かたぎり・のりゆき)
マックスウェル空軍基地に位置する、アメリカ空軍戦争大学(Air War College)の国際安全保障学部助教授。ペンシルベニア大学政治学部より博士号取得。専門は国際安全保障、非対称戦争、東アジア政治。戦争大学では日本を含む北東アジアの授業、カリキュラム、そして毎年の日本訪問を担当している。2014年には非対称戦争やイラク、アフガニスタンでのアメリカの軍事戦略に関わる博士論文が出版される予定。

今回の問題から学ぶべきこと

 先月23日の中国による防空識別圏設定は日本だけでなく、多くの東アジア諸国にとっても地域の安定を揺さぶる危険性を持つ、受け入れられない行動だろうが、必ずしも理解できないことではない。幾つかの要素を考えると中国にとってはある意味当然のことだからである。

 もちろん、中国の防空識別圏は日本と韓国の領空、そして米軍の訓練地域とかぶるため日韓米それぞれとの問題にはなるが、世界には数カ国が独自の防空識別圏を設定しているため前例がある。中国がその輪に加わることへの国際社会からの抵抗は一時的にはあろうとも、時間が経つにつれ弱まる。より広く考えると、防空識別圏は国際法上の規定がなく、それ自体が国際法を破ることでもない。

 また、単に自国の主権を繰り返すだけでなく、今回は日中双方で航空の安全を共同で守るべきだと主張することにより、その領土主張を正当化させる働きもする。尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海での領土問題で中国がいかなるパフォーマンスをするかは共産党の正統性の維持、ナショナリズムの高揚とコントロール、そしてメディア統制などの中国内政にとって極めて大切な問題になる。多くの中国国民には納得のいかない、「不平等」な東シナ海での現状を彼らにとって良い方向で変えようとしているのである。他国を一時的に怒らせてでも、強い中国のイメージを作り上げることにより国内で点数を稼ごうとするのは驚くべきことではない。

 同時に日本側が認識すべき点は、今まで領土を実質支配してきたはずの日本の外交と防衛政策に、ここ数年の間で大きなスキができていたことである。拓殖大学の森本敏・特任教授は防衛大臣在任時に中国の防空識別圏設定をある程度予想していたようだが(読売オンライン、11月27日)、それを未然に防ぐ必要な政策を出していなかった。日本側で幾つかできることを認識していたのにもかかわらず、それを怠っていたのではないかと邪推してしまう。

 さらに、外務省が中心となって世界で尖閣の日本帰属を訴えてきていたのにも関わらず、今回の防衛圏を防ぐことができなかった。そして尖閣沖の警戒や度重なるF15戦闘機のスクランブルなどを通して作り上げていたはずの抑止力も、結果として不十分であった。つまり、日本人が多額の血税を投資してきたのにも関わらず、日本の国土、主権、そして国民を護るための日本の外交と抑止力のシステムがしっかり機能していないのである。これは中国のみの問題ではなく、日本自身が招いた問題でもあるのではないか。

 誤解を防ぐために書いておくが、私は今回の中国の行動を評価しない。しかし中国がこのスキを突こうとする理由は上記の通り幾つもある。今回の問題で日本の論壇は中国の糾弾に多く走っているが、私は、中国を一方的に責めて相手による自発的な政策転換を待ち望むのではなく、日本人自身が自省を兼ねて日本外交の問題点に着目し、より大きな枠組みの中で外交政策決定過程の改革を進めるべきだと思う。中国は今後も日本のスキを狙う手を止めることはない。日本側が戦略と制度を整えて今後の政策失敗を防ぐ必要があるのである。

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