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なぜ病魔と闘う姿を追い続けたのか

やしきたかじん氏の逝き方から見える冷たい社会

2014年1月10日(金)

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 私の敬愛する歌手、やしきたかじん氏が亡くなった。今は、このことで頭がいっぱいで、そのことしか書けないから、書くことを決断した。

 成功し著名になった者の亡くなり方について考えないではいられない、死だった。

見せつけられた「著名であること」の負の側面

 “やしきたかじん”は、近畿圏ではその知名度と人気度で視聴率2桁を常に維持する存在だが、関東ではいかばかりだろうか、という歌手でありタレントだという認識を私は持っていた。これは、私もその比ではないが似たところがあり、だから東京に行くとホッとしたりする。

 だが、実は東京でも著名なのだ、と、思い知らされたのは、東京でのライブが満杯とか東京でも番組オファーが相次ぐというプラスの面でではない。彼がわざわざその東京を選んで治療に通う新幹線ホームでの姿を週刊誌で掲載されたことでだ。

 大勢の売れない芸能人たちが憧れてやまない「著名になること」。その負の側面を知らされた時だった。

 これが不倫発覚とか路上でキスとかの激写なら、結婚生活が破局しようが子供に迷惑をかけようが「芸能人だもの」で含み置く範疇だと私は考える。「人間という生き物の愚かさ、滑稽さ」や「人生のままならなさ」は、本人の「カッコよく見せたい」意図とは別のところで他者からはそう映る。

 「カッコよさ、美しさ」ばかりが商品になるのではない。「どれほどカッコよくても、やっぱししょせん人間だ」というところに行きつき、やがて消費され消えていく。

 美空ひばり級の伝説の人物でも「人間くささ」的なプライベート映像が残っていたりすることが商品になる背景には、どこか“憎めない人間像”を世間が許容する尺度があり、それがリアルに浮かび上がることで不格好な場面も相殺され、失望、ではなく「あー面白かった」という感覚が消費されていく。

 夢を売る芸能界とはそういう職場だと私は理解している。家が燃えても、ガケから転がり落ちても観る側には「娯楽」なのだ。

 だが、病気、となると話は別だ。

 生きようと懸命に病気と闘う姿の週刊誌化というのは、その撮影を本人が望まない限り、私は「人権問題」ではないか、とまで思うのだ。

 「おぼれた犬は棒で叩け」という言葉がよぎった。いつからこの社会はそうなったのだろう。

 その写真は、そこまで「著名であること」の負を私が感じる、実は序章だった。

「遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」」のバックナンバー

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「なぜ病魔と闘う姿を追い続けたのか」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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