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偽ベートーベン問題に見る「よいものは売れない」論

事業力の法則を考える

2014年3月6日(木)

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 世間を騒がせた「偽ベートーベン」問題ですが、経営コンサルタントとしての立場で考えると興味深いビジネスとの対比が見える問題でもあります。

 私的には新垣氏と佐村河内氏の関係は、ものづくり企業やコンテンツ作成者とそれを売るためのビジネスモデルやビジネスプロデューサーの関係を彷彿とさせるのです。今回は、新垣氏と佐村河内氏の関係に着目し、普遍的なビジネスプロデュース力というものについて考えていきたいと思います。

 本コラムは、ビジネスの仕組みの構築という観点から考察していますので、ことの善悪を論じているものではないこと、また偽ベートーベン問題そのものを論じているのではないことをあらかじめお断りしておきます。

 さて、佐村河内氏は被爆をされたご両親のもとに広島で生を受け、人生の半ばで聴力を失った作曲家と知られ、彼の人生のストーリーとともに彼が作曲したとされる作品は世の中の人々の心を捉えました。感動を呼ぶストーリーとして世間に知られるようになったのですが、最近彼の虚偽の言動が知れることとなり物議を醸しました。これまでの感動ストーリーそのものが嘘で組み立てられたものであることがわかったからです。

 彼の虚偽の言動が公になるまでは、彼が生み出したとされる音楽は彼のファンにとって「よいもの」であり、だからこそなかなかクラッシック音楽が大ヒットしない昨今でも「売れる」ものになったのです。佐村河内氏の名前はそのストーリー性とともにブランド化し有名になったわけです。

 彼は音楽家の新垣氏という曲のつくり手(=価値創造の担い手)を得て、彼の作品が売れる仕組みをつくり上げたのです。

 一方、彼に曲を提供したとされる新垣氏は、一連の佐村河内氏の作品の本当の作曲家として世間に知られることもありませんでした。彼は一部の専門家の間では名前を知られる優れた演奏家であり、現代音楽の作曲家であるとのことですが、彼の作品はそれだけで広く「売れる」ものではなかったのです。もちろん新垣氏にとって、佐村河内氏に提供した曲で有名になるという意思はなく、会見であの程度の曲は現代音楽を勉強したものには誰にでも作れるという意味の発言もしていますから、自分が売れることは本意ではなかったのでしょう。

 このことは、「よいものが売れない」という現象と、「よいものが売れる」という現象という相反する現象を象徴しています。佐村河内氏のファンにとって、彼の作ったとされた一連の作品は「売れる」「よいもの」であり、メジャーな形で彼の専門である現代音楽以外の作品が売れるのは本意ではなかったという新垣氏は、世間一般の人にとって無名であり「売れる」「よいもの」を作り出してはいなかったのです。

「よいもの」とは何なのか

 一概に「よいもの」といっても人によってそれは異なるでしょう。ですから、「よいもの」と消費者との関係も、「よいものが売れない」 「よいものが売れるとは限らない」「よくないものが売れる」 「よくないものでも売れる」など様々なシーンが考えられます。

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「偽ベートーベン問題に見る「よいものは売れない」論」の著者

生島 大嗣

生島 大嗣(いくしま・かずし)

アイキットソリューションズ代表

「成長を目指す企業を応援する」を軸に、グローバル企業から中小・ベンチャー企業まで、成長意欲のある企業にイノベーティブな成長戦略を中心としたコンサルティングを行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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