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法人税引き下げ論争に欠けている3つの視点

実は重い社会保険料の事業主負担

2014年6月4日(水)

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 今、法人税率の引き下げ幅や実施時期を巡り、引き下げに積極的な経済財政諮問会議と慎重な姿勢を示す財務省などの間で対立が起こっている。この背景には、安倍晋三首相が今年5月15日に開催した経済財政諮問会議で、6月に策定する経済財政運営の指針(いわゆる「骨太方針」)に法人税率の引き下げを明記するよう指示したことがある。

 同会議では、伊藤元重東大教授ら民間議員から、東京都で35.64%の現行税率について、数年間で20%台への引き下げるよう求める提案があった(図表1参照)。将来的には25%を視野に入れる。財源は例えば研究開発減税などの「政策減税(租税特別措置)の見直し」や、「課税ベースの拡大」「景気回復に伴う税収増」などで捻出する。

図表1:実効法人税率の国際比較(2013年1月時点)
財務省説明資料(法人課税の在り方)
(出所)財務省資料

 しかしながら、政府債務(対GDP)が急増する中、政府は2020年度の基礎的財政収支を黒字化する目標を掲げており、財務省の意を受けた麻生太郎財務相は、数年以内での法人税率引き下げに慎重な姿勢を示している。

 このような対立の中心となっているのは「法人税パラドックス」と呼ばれる現象の解釈である。「法人税パラドックス」とは、法人税率(表面)を引き下げても法人税収(対GDP)がむしろ増加する現象をいう。1980年代から2000年代に、法人税引き下げ競争が頻発した欧州などで経験された。この解釈について様々な実証研究が行われており、主に以下の3つの要因が指摘されている。

 第1は、租税特別措置の廃止や減価償却の縮減など、「課税ベースの拡大」が寄与する。第2は、法人税率の引き下げに伴い、個人(例:自営業者)から法人へのシフトが促進(いわゆる「法人成り」)される。第3は、法人減税が起業家精神や投資を喚起し、法人利益が増加する、という要因である。

 海外の実証研究の解釈を挙げると、Ruud A. de Mooij & Gaëtan Nicodème(2006)は、第1、第2、第3の要因が均等に寄与したと見ている。一方、Sørensen(2007)やPitrowska & Vanborren(2008)は第3の要因よりも、第1と第2の要因が寄与したと見る。他方、Devereux, Griffith & Klemm (2004)は第1の要因よりも、「法人成り」などの第2と第3の要因が寄与したとしている。

 このうち、Devereux, Griffith & Klemm (2004)が妥当とすると、課税ベースの拡大は不要に見えるが、それは誤りである。というのは、「法人成り」で法人税収が増加しても、その場合、個人から法人へのシフトを通じて所得税収が減少するため、法人税収と所得税収の合計で評価する必要があるからだ。

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「法人税引き下げ論争に欠けている3つの視点」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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