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日中で「言葉の戦争」が始まった

オバマ大統領の“レッドカーペット外交”に不安

2014年6月6日(金)

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 日本と中国が「言葉の戦争」に突入した。安倍晋三首相は5月30日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議で基調講演を行った。中国を名指しこそしなかったものの、「既成事実を積み重ね、現状の変化を固定しようとする動きは、強い非難の対象とならざるを得ない」と批判した。

 翌31日、米国のチャック・ヘーゲル国防長官が安倍首相の発言に呼応する演説を行った。「ここ数カ月の間、中国は南シナ海での領有権を主張し、地域を不安定化させる一方的な行動を取ってきた」「威嚇や軍事力を通じた領有権の主張には断固として反対する」。

 これに中国の王冠中・副総参謀長が反発。「中国に対する一種の挑発だ。決して容認できない」と切り返した。

 なぜ、この時期に日米中がからむ「言葉の戦争」が勃発したのか。今後、どのような展開が見込まれるのか。日本国際問題研究所の主任研究員で、海洋安全保障を専門にしている小谷哲男氏に聞いた。

(聞き手は森 永輔)

アジア安全保障会議における安倍晋三首相と王冠中・副総参謀長との応酬が注目を集めました。

小谷 哲男(こたに・てつお)
日本国際問題研究所主任研究員/法政大学兼任講師
2008年同志社大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。その間アメリカのヴァンダービルト大学日米センターでアジアの安全保障問題、特に日米関係と海洋安全保障に関して在外研究に従事する。その後、海洋政策研究財団、岡崎研究所を経て現職。現在は、中国の海軍力や尖閣諸島をめぐる日中対立を中心に研究・発信を行うとともに、「海の国際政治学」を学問として確立すべく奮闘中。
(写真:加藤 康、以下同)

小谷:まさに「言葉を使った戦争」と言ってよい、激しいやりとりでした。

なぜ、この時期に「言葉の戦争」が起きたのでしょう。これまでの経緯を振り返ると、安倍首相が5月にNATO(北大西洋条約機構)本部で演説した頃から始まったように見えます。同首相は、中国の軍事費拡大が日本を含む国際社会の懸念事項だと批判しました。

小谷:今の状態は、まだ過程だと思います。これから安全保障に関わる大きな会議が続きます。それぞれの場で、今回と同様の応酬が繰り返される可能性があると思います。7月にはARF(ASEAN地域フォーラム)が予定されています。アジアの安全保障における“夏の陣”ですね。

同じく7月にはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国)の首脳会議が予定されています。そして秋、9月には上海協力機構の首脳会議、11月にはASEAN(東南アジア諸国連合)国防相会議とAPEC(アジア太平洋経済協力)の会議が予定されています。目白押しですね。

懸念すべきは中国国内のナショナリズム

 小谷さんは今回の応酬を「言葉の戦争」と表現されました。この「戦争」はどれだけシリアスなものなのでしょうか。

小谷:日米の主張と中国のそれとが全くかみ合っていません。日米は、東シナ海や南シナ海で起きている紛争を国際法に基づいて平和的に解決しようと主張しています。これに対して中国は「中国が東シナ海や南シナ海で取っている行動は、正当な権利を主張しているにすぎない。周囲の国が挑発するから、それに対処するために行動している」と反論している。

 日米中の政府はいずれも戦争などしたくありません。これが前提としてあると思います。しかし、このままレトリックが激しくなっていけば、武力を伴う紛争に発展する可能性も否定できません。

 懸念しているのは、中国の国内事情です。政府間の言葉の応酬が続くうちに中国国内でナショナリズムが高まる可能性があります。「言葉ではらちがあかない」「武力に訴えてでも…」という世論が高まれば、中国政府は譲歩ができなくなってしまう。

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「日中で「言葉の戦争」が始まった」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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