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2014年・財政検証から透けて見える「厚労省の本音」

「所得代替率」の高低よりも「年金分布」の徹底分析を

2014年7月10日(木)

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 政権与党と行政機構は互いに影響を及ぼし合い、あらゆる政策は政治の影響を受ける。そして、民主主義である以上、政治は有権者の影響を受ける。痛みを伴う改革は危機が顕在化するまで、なかなか進まない。

 そのような状況下で政府が公表した資料を冷静に見直すと、新たに読み取れる情報(シグナル)がある。それは何か。2014年6月3日、厚労省が公表した「平成26年財政検証結果」(2014年・財政検証)から透けて見える「厚労省の本音」である。いわば「厚労省が政治に突きつけたイエローカード」だ。

 なぜ「厚労省の本音」が透けて見えるのか。財政検証は国民年金や厚生年金など年金財政の長期見通しを明らかにするもので、法律に基づき5年に1度改訂する。今回の検証は、これまでと違い、名目運用利回りや実質賃金の伸びの条件を変えた8つのケース(持続可能なケースと持続困難なケース)を並列で示したことから、本音が見えるようになった。厚労省は前回まで(2004年と2009年)、「公的年金の安定性」を裏付ける「基準ケース」を示していたが、今回は基準ケースの設定をやめている。

 「公的年金の安定性」とは何か。政府は2004年の年金改革で、現役世代の手取り平均収入に対する年金の給付水準(所得代替率)を今後約100年間にわたって50%以上に維持すると法律に明記した。50%を割る場合は制度改正を義務づけている。「安定」であるとは「所得代替率を約100年間50%以上に維持」できることを意味する。

 今回の検証は、楽観的な高成長を前提とする「5ケース」(ケースA~E)でも、現在62.7%の所得代替率が50%程度に低下し、約30年後の給付水準は現在の2割減となることを明らかにした。他方、慎重な立場から低成長を前提とする「3ケース」(ケースF~H)では、所得代替率は50%を割り、35~45.7%に低下する。状況によっては年金の積立金が枯渇することが明らかとなった。

厚労省が政治につきつけたイエローカード

 楽観的な高成長を前提とする「5ケース」と、慎重な立場から低成長を前提とする「3ケース」では、どちらが現実的な設定なのか。答えは簡単で、後者の「3ケース」である。

 楽観的な高成長を前提とする「5ケース」は、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2014年1月20日、以下「中長期試算」と呼ぶ)が示す経済再生ケースに接続。経済再生ケースは2013~2022年度の平均実質GDP成長率2.1%を前提としている。他方、慎重な立場から低成長を前提とする「3ケース」は、中長期試算の参考ケースに接続。参考ケースは2013~2022年度の平均実質GDP成長率1.3%を前提としている。2000年以降の平均実質GDP成長率は0.7%程度であったことから、高成長を前提とする「5ケース」は非現実的で、低成長を前提とする「3ケース」の方が現実的である(関連記事「成長幻想の源は、間違った経済目標」)。

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「2014年・財政検証から透けて見える「厚労省の本音」」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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