中国の電子商取引最大手、アリババ集団が進めてきた米ニューヨーク証券所への株式上場(IPO)が延期される見通しとなった。当初は8月上旬とみられてきたが、市場環境などを勘案して9月にずれ込む公算が大きい。上場時の時価総額は1000億ドル(約10兆2000億円超)を超えるとみられ、大株主のソフトバンクなどにも影響が及ぶ注目案件。巨人・アリババの上場延期は、日本株の先行きにも影響を与えそうだ。
一つ目は日本株の夏枯れが例年以上に深刻になる可能性だ。
東京市場は売買の6割を外国人投資家に依存している。海外の大型上場で潤った投資マネーは従来、東京市場に流入し日本株を下支えする要因になってきた。
昨年は米ホテル運営大手のヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスが再上場。当時の市場からの調達額は23億5000万ドルとホテル銘柄の上場としては過去最大規模だった。ヒルトン株で利益を確定したヘッジファンドなどは、こぞって日本株を含むアジアの株式相場に流れ込んだ。
その後も米国では新規上場企業が2014年4~6月に86社となり、前年同期比で約4割も増加。利益を得た海外マネーに支えられる格好で同じ期間に日経平均株価も1万5000円前後で底堅く推移した。
しかし例年、8月はただでさえ世界的に株式相場が夏枯れの様相を呈する。アリババは、市場の起爆剤として期待されたが、上場延期で東京市場も肩透かしを食った格好だ。
「市場のエネルギー」を示す売買高(東京証券取引所第一部)は、アベノミクス相場が本格化した2013年に1日平均34億株あったが、8月に限ると22億株まで落ち込む。月別の売買高は1年でも最低レベルだ。8月に相場が閑散期を迎えるのはリーマンショックのあった2008年以降、ほぼ同じ傾向を辿っている。
実際、東京市場では日経平均株価は1月に付けた今年の高値(1万6121円)を目前に足踏み状態が続いている。
懸念される影響の2つ目は、アリババの上場延期に加えて東京市場でも新規上場企業が頭打ちになってきたことだ。7月末時点で東証から承認を受けた8月の新規上場企業はわずか1社にとどまる。
新規上場企業は、いわば「市場の新陳代謝」。今年8月に上場するのは、関西地盤の薬局チェーン店、キリン堂ホールディングスのみ。昨年8月は訪問介護事業のN・フィールドが上場し、福岡証券取引所では九州中心にホテルチェーンを展開するアメイズも「デビュー」した。
昨年1年間、アベノミクス相場に乗って東証に上場したのは75社だった。今年は7月末までに既に34社が上場を果たした。昨年は同じ期間に37社が上場しており、足元はやや息切れ感も見え始める。
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