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消費税再増税に対する慎重論に欠けている視点

増税に伴う反動減は、消費税導入時より小さい

2014年10月9日(木)

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 政府は2015年10月に消費税率を10%に引き上げることを予定している。安倍晋三首相はその最終判断を2014年末に行うつもりだ。第一弾の増税を行った4~5月頃まで、政権内やメディアでは、再増税を容認する発言が目立っていた。だが、それから数か月が経過し、消費税再増税に対する慎重論が徐々に広まっている。

 この理由は、今年4~6月期の実質GDP成長率(季節調整値)が、前期比で大きく落ち込んだことにある。内閣府が8月に公表した1次速報では前期比1.7%減、9月に公表した2次速報では1.8%減となった。1.8%減は、東日本大震災が起きた2011年1~3月期を上回る落ち込みだ。実質GDP成長率が大きく落ち込んだのは、増税前の駆け込み需要の反動で個人消費のマイナスが過去最大となったのが主因だ。

 また、4~6期の実質GDPの落ち込みが、1989年の消費税導入時(0%→3%)の1.3%減や97年の増税時(3%→5%)の0.9%減より大きく見えることも、再増税慎重論に大きく影響している。

2000年代のトレンド成長率は1.4%

 しかし、このような見方には若干留意が必要である。そもそも、消費増税による反動減の大きさは、実質GDPのトレンド成長率の影響を取り除いて評価する必要がある。つまり「反動減=実質成長率-トレンド成長率」と定義して、反動減の大きさを評価する必要がある。このように見ると、今回の反動減は過度に大きいとは言えないのである。

 例えば、トレンド成長率が1.2%の「高成長ケース」と0.5%の「低成長ケース」があるとする。その際、増税の影響で実質GDP成長率が一時的に同じ2%減に陥っても、高成長ケースの反動減は3.2%(-2%-1.2%)、低成長ケースは2.5%(-2%-0.5%)と評価するのが妥当である。

 では、近年のトレンド成長率をどう設定するか。現在の政権は、年率平均2%を目標に設定し、その実現を目指している。これは内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」(2014年7月25日)が示す「経済再生ケース」(標準ケース)に基づく。「経済再生ケース」は2013~2022年度の実質GDP成長率を年率平均2%と置いている。

 内閣府の統計データによると、2013年度の実質GDP成長率は2.3%程度となっており、政権は2013年度に目標を達成したことなる。だが、2013年度の成長率には注意が必要だ。というのは、2012年度後半に策定された10兆円規模の補正予算や、2014年4月の消費増税前の駆け込み需要が、成長率を嵩上げしているからだ。

 実際のトレンド成長率は、「経済再生ケース」が目指す2%よりも低い可能性が高い。なぜなら、2000年代の実質GDP成長率(年平均変化率)は1.4%(リーマン・ブラザーズ破綻後の金融危機の影響を除くため2000~08年の平均を取った場合。2009年も含めると0.7%)だったからだ。

 1.4%という値は1980年代の4.3%、90年代の1.5%よりも低いため、2%程度の成長は実現可能なはずであるという主張が出てくることも頷ける。しかし、それは幻想である(関連記事「成長幻想の源は、間違った経済目標」)。日本経済の構造は変化しており、異次元緩和で円安が進んでも実質輸出は伸び悩む一方だ。国内生産能力の低下や世界経済の停滞が原因である。円安による輸入インフレは、家計の実質所得を目減りさせている。これらが経常収支の黒字縮小や貿易赤字に表れている。

 低成長の原因は供給側の制約も大きい。高度成長期は、人口増や高貯蓄を背景とする労働人口や資本ストックの増加が成長を牽引した。だが、急速な少子高齢化に伴う人口減や貯蓄率の低下により、労働力の減少や民間の純資本ストック(粗資本ストック-資本減耗)の伸び鈍化が顕在化しつつある。現状では、生産性が上昇しない限り、トレンド成長率が低下してしまうのは自然な姿である。

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「消費税再増税に対する慎重論に欠けている視点」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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