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ノーベル賞学者は10年前、「敗軍の将」として何を語っていたか

2014年10月7日(火)

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 「こんな国では、もう仕事なんてできませんよ」

 2014年のノーベル物理学賞が、米カリフォルニア大学の中村修二教授ら日本人3に贈られることになった。一報を聞いて記者の脳裏に浮かんだのは、激烈な口調で不満をぶちまける、怒りに満ちた中村氏の表情だった。

 記者が中村氏に取材したのは、2005年の1月上旬。いわゆる「青色LED訴訟」が和解に至り、中村氏が事実上敗北した直後のことだった。インタビュー内容は、日経ビジネス2005年1月24日号の「敗軍の将、兵を語る」欄で4ページにわたり掲載した。

 今から振り返ると、中村氏が10年前に見せた怒り、あるいは怨念のようなエネルギーが、ノーベル賞を引き寄せたように思える。お祝いムードに水を差す格好になり恐縮だが、「敗軍」の記事から中村氏の原動力を探ってみたい(引用文の肩書きは記事掲載当時)。

 日本の司法制度は腐っている――。言いたいことは、この一言に尽きますよ。本当に頭にきています。

 (2005年)1月11 日、「青色LED(発光ダイオード)」の発明対価を巡って私と日亜化学工業(徳島県阿南市、小川英治社長)が争っていた裁判が和解しました。昨年(2004年)1月の東京地方裁判所判決では、私が発明した「404特許」が青色LEDの製品実用化を可能にしたと指摘し、約604億円の発明対価を認定しました。そして日亜化学に対し、請求額の200億円を支払うよう命じました。

 それが東京高等裁判所の和解勧告ではわずか6億円。利息を合わせても8億4000万円ですよ。しかも404特許だけではなく、私が日亜化学在職中に発明した全特許の対価だというんですからね。もうむちゃくちゃです。初めから「100 分の1」という落としどころを決めていたとしか考えられない。

 もちろん大いに不満ですよ。でも高裁の和解勧告は判決とほぼ一緒で、最高裁に上告しても勝てる見込みはほとんどない。それで、升永英俊弁護士と相談して和解することにしました。和解とはいえ、完全に私の負けですよ。

 負けを認めつつも、素直にそれと向き合えない。むしろ徹底的に司法制度を罵倒することで、自らの正当性を主張する。この「諦めの悪さ」こそが後のノーベル賞に結びついたのだろうが、当時はそう感じざるを得ない事情があった。

 ここで裁判の前史をざっと振り返っておこう。

 中村氏は1979年に徳島大学大学院工学研究科を修了し、日亜化学に入社。1990年に「ツーフロー方式」と呼ぶ、窒化ガリウム結晶成長技術の特許(404特許)を出願した。これが、高輝度の青色LEDの道を開いたとされる。そして1993年に日亜化学が青色LEDの製品を発表し、同社の業績は右肩上がりで急成長していった。

 99年12月に日亜化学を退社した中村氏は、翌2000年2月に米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授に就任した。そして2000年12月、米国において日亜化学が中村氏を企業秘密漏洩で提訴。これに対し、2001年8月に中村氏が日亜化学を東京地裁に提訴した。これが4年に及ぶ青色LED訴訟のきっかけだった。

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「ノーベル賞学者は10年前、「敗軍の将」として何を語っていたか」の著者

小笠原 啓

小笠原 啓(おがさわら・さとし)

日経ビジネス記者

早稲田大学政治経済学部卒業後、1998年に日経BP社入社。「日経ネットナビ」「日経ビジネス」「日経コンピュータ」の各編集部を経て、2014年9月から現職。製造業を軸に取材活動中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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