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ノーベル賞学者は10年前、「敗軍の将」として何を語っていたか

2014年10月7日(火)

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 この過程で中村氏は、日米の司法制度の違いを目の当たりにする。

 私は米国でも裁判を経験しているので、日本の裁判制度自体に非常に矛盾を感じるんですよ。

 米国では証拠書類の開示が本当に徹底しています。相手側の弁護士が要求する書類を全部出さないとダメ。パソコンは全部押収されましたし、私が消したアダルト関連の迷惑メールまでチェックされるんですよ。

 ところが日本では、そんなのないんです。今回の訴訟に関する証拠、私の研究ノートや特許書類は全部日亜化学が持っています。持ち出したら本当に企業秘密漏洩になりますからね(笑)。それを提出しろと言っても完全に無視。しかも裁判所は何も言わない。そのくせ日亜化学側は、自分たちに有利な証拠書類だけを出してくる。

封建制度を引きずる裁判官

 一方、こちらは記憶だけが頼りですからね。日亜化学側が提出した証拠書類に反論したり、我々に有利なことが書いてある部分を引用したりはできますが、十分とは言えない。こんな状況では対等な裁判なんてできませんよ。

 だから日本では真実がよく分からないんですよ。そこで裁判長が「お前ら両方の主張はよく分からんから、わしが全部決める。落としどころの判決はこれじゃー」と言って終わり。封建制度そのままの、まさに裁判長の独壇場。江戸時代から全く変わってない。

 こうした不満を、中村氏が以前から持ち続けていたわけではないだろう。2004年1月には東京地裁が、404特許の発明対価を約604億円と認定し、請求額の200億円を中村氏に支払うよう命じた。この結果、「会社vsエース技術者」という対立構造が浮き彫りになり、中村氏はその代表選手として強烈な光を浴びるようになった。

 地裁で200億円判決が出た時は、これはいけると思ったんですよ。経済団体の幹部たちが「とんでもない判決だ」とか言ってましたが、現場のサラリーマンの99%は私の味方だったと思います。「会社にばれるとまずいので名前は出せないが、陰ながら応援している」といったメールを、いろいろな会社の方から頂きました。研究者も技術者もみんな意気揚々としてましたね。

 それに地裁の判決以降、多くの企業が報酬制度を見直しました。先日ある会社の人に会いましたが、そこでは報酬が天井知らずに変わりました。その人がこう言いました。「うちの会社の報酬制度で中村さんの発明対価を計算すると、軽く100億円を超える」と。

 日亜化学は不服として控訴し、東京高裁に舞台が移った。しかし中村氏は、自らの主張が覆されるとは夢にも思わなかった。

 約1年間控訴審をやってきましたが、私としては負けるなんて思ってもいなかった。地裁の三村(量一)裁判長は発明対価を約600億円と認定しましたが、高裁ではさらに1000億円ぐらいになるんじゃないかと自信を持っていました。地裁の時も完璧でしたが、さらに完璧を期した準備書面を升永さんと作って高裁に出していましたから。100%なんかじゃなくて、1000%勝てる確信があったんです。

 2004年12月24日、その自信は打ち砕かれる。東京高裁が日亜化学と中村氏双方に和解を勧告したのだ。

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「ノーベル賞学者は10年前、「敗軍の将」として何を語っていたか」の著者

小笠原 啓

小笠原 啓(おがさわら・さとし)

日経ビジネス記者

早稲田大学政治経済学部卒業後、1998年に日経BP社入社。「日経ネットナビ」「日経ビジネス」「日経コンピュータ」の各編集部を経て、2014年9月から現職。製造業を軸に取材活動中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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