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日本郵政、大型買収が抱えるこれだけの不安

2015年2月24日(火)

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 日本郵政が動いた。

 中核子会社の日本郵便が今月18日、オーストラリアの物流大手、トール・ホールディングスを64億8600万豪ドル(約6200億円)で買収することを発表した。日本郵政は今秋、金融子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命と、3社同時上場を目指しているが、完全子会社として日本郵政の下に残る日本郵便の収益力を高め、郵政株の価値を上げるのが狙い。

 しかし、これまで海外事業でほとんど成果を上げていない日本郵便がにわかに海外の大手物流企業を買収し、運営できるのか。人材、ノウハウなど様々な面で不安も残る。まず疑問として浮かぶのは、トールにはこれだけの巨額投資をするほどの成長力があるのか、リスクはどこにあるのか、である。

郵便事業の利益率はわずか0.7%

 「Why Toll?(なぜ、トールなのか)」。日本郵政は買収決定に当たって、トールの強みをこう説明した。①アジアパシフィック地域における高いプレゼンス、②グローバルなフォワーディング(自社だけでなく他の物流会社の活用も含め、荷主から送付先までの運送、通関、保管、船積みなどを一貫して行うこと)や、3PL(サードパーティー・ロジスティクス、荷主に物流改革を提案。物流業務を包括請負すること)事業で豊富な経験を持つ、③多国籍企業経営の豊富な経験を持つ、④事業別・地域別にバランスの取れたポートフォリオ(事業構造)、⑤日本郵便とビジネス上の重複部分がほとんどなく、相互補完の関係がとれる。

 つまり、グローバル物流の主要事業を展開する力を持ち、成長するアジア市場に強い点を買ったというわけだ。2014年6月期の売上高は88億1100万豪ドル(約8423億円)、純利益は2億9300万豪ドル(約280億円)。アジアなど55カ国に1200以上の拠点を持つトールを「国際物流では最高の相手」(日本郵政の西室泰三社長)と持ち上げた。

 裏にあるのは、金融子会社2社が日本郵政と同時上場する一方で、郵政の完全子会社としてとどまる日本郵便の収益力の弱さだ。売上高は2兆7739億5800万円(2014年3月期)に上るが、純利益はわずか329億1100万円(利益率1.2%)。

 電子メールの拡大で郵便事業は低迷が続き、成長分野の宅配便事業「ゆうパック」もヤマトホールディングスや佐川急便に差をつけられている。2010年には、日本通運の宅配便事業、ペリカン便と統合したものの、システム運営が上手くいかず、配送が大幅に遅れるという失態を犯したこともある。郵便事業だけ見れば、2014年3月期の営業利益率は0.7%と極端に低い状況を続けている。

 トール買収で成長の場を海外に求め、日本郵便の収益力を高めることは、「国内の郵便局ネットワークを維持するための収益力をつけるのに必要」(西室社長)だが、日本郵政の上場後の株価を維持するためにも欠かせなかった。

 だが、それは果たして可能なのか。つぶさに見ていけば、やはり懸念は浮かぶ。

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「日本郵政、大型買収が抱えるこれだけの不安」の著者

田村 賢司

田村 賢司(たむら・けんじ)

日経ビジネス主任編集委員

日経レストラン、日経ビジネス、日経ベンチャー、日経ネットトレーディングなどの編集部を経て2002年から日経ビジネス編集委員。税・財政、年金、企業財務、企業会計、マクロ経済などが専門分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官