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「振り込め」「母さん助けて」が名詞とつながる話。

命令形+名詞という構造(前編)

2015年5月7日(木)

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 最近「上京型詐欺」と呼ばれる新手の犯罪が流行っているのだそう。いわゆるオレオレ詐欺の新手法です。

 一般にオレオレ詐欺――息子などを装って電話をかけて、高齢者から金をだまし取る詐欺――では、お金の受け渡しに銀行振込・郵送・対面などの方法を用います。

 冒頭の上京型詐欺は、このうち対面型の一種です。ただし対面の方法が実に大胆。地方に住む被害者を言葉巧みに誘導して「上京」させたうえ、受け取り役の人物(受け子)に金を渡させるのです。土地勘のない場所に被害者をおびき出すことで、被害者の心理に不安感を植え付けて、「早くお金を渡して息子の危機を救わねば」という意識をもたせるのだそうです。犯罪者の悪知恵には、いつも驚かされます。

 さて、朝日新聞の記事(2015年4月14日)にちょっとした発見がありました。記事の見出しにこうあったのです。「上京してくれ詐欺、急増/不慣れな地方高齢者狙う」。この見出しにある「上京してくれ詐欺」は、おそらく朝日新聞による造語。「振り込め詐欺」にヒントを得た命名なのでしょう。

 この上京してくれ詐欺も、原形である振り込め詐欺も、動詞の命令形+名詞(以下、命令形+動詞)という共通の構造を持っています。この構造について、巷では「文法的にありえないのでは?」とか「違和感を覚える」という意見を耳にします。のちほど改めて紹介しますが、以上のような違和感を表明する意見が、新聞の投稿欄に登場したこともあります。

 筆者は言語学者ではないので、文法的な正誤の判断はできません。ただ、過去に命令形+名詞という言葉があったかどうかについては、いくらか情報を持っています。そこで今回の「社会を映すコトバたち」は「命令形+名詞」について特集します。実はこの構造を持つ言葉は、過去にもちょっとだけ存在するのです。

確かに、命令形+名詞は珍しい

 本題に入る前に、命令形+名詞の「違和感」について少しだけおさらいします。

 日本語の語彙の中には、動詞+名詞という構造を持つ名詞が多く存在します。筆者がすぐに思いついただけでも、働く+口=働き口とか、食べる+放題=食べ放題とか、建てる+物=建物とか、泣く+声=泣き声など、実に様々な事例を示すことができます。

 ただ以上で登場する動詞は、いずれも五段活用のうち「連用形」の語形なのです。例えば動詞「働く」の場合、働か・ない、働こ・う(未然形)、働き・ます(連用形)、働く(終止形)、働く・とき(連体形)、働け・ば(仮定形)、働け(命令形)と活用します。働き口の「働き」部分は、連用形であるわけです。

 連用形とは、用言(動詞・形容詞など)や助動詞といった「活用する品詞」につながる形という意味。したがって、働き(連用形)+ます(助動詞)のように接続するのが本来の形です。

 しかし連用形にはそのほかにも役割があります。例えば「働き」のように単独で名詞になったり、「働き者」のように体言(名詞・代名詞)と接続して全体で1つの名詞になったりするのです。働き口、食べ放題、建物、泣き声といった名詞たちは後者のパターンです。そしてこの連用形+名詞というパターンが、動詞+名詞の王道パターンであるわけです。

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「「振り込め」「母さん助けて」が名詞とつながる話。」の著者

もり ひろし

もり ひろし(もり・ひろし)

新語ウォッチャー(フリーライター)

CSK総合研究所を経て、1998年から新語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』(自由国民社)で「流行現象」のコーナーを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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