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大阪都=大阪市廃止分割は、大阪を弱く不便にする

住民投票間近 上山信一・慶応義塾大学教授と異なる視点からの分析

2015年5月15日(金)

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5月17日、大阪市役所の運命が決まる

 5月11日、日経ビジネスオンラインでは大阪都構想の推進派である上山信一・慶応義塾大学教授の記事を掲載し、大きな反響があった。そこで17日の住民投票を前に、反対派の論客である村上弘・立命館大学教授の論考を掲載する。

 大きな「市」の廃止をめぐる住民投票としては、ベルリン市(都市州)と周辺州の合併を問う事例(1996年、否決)と並ぶギネス級の投票が迫る中、行政学、地方自治論の視点から、しかし批判的に、大阪都の内容と進め方について論じる。

1.東京からは見えない大阪都問題

 最初に指摘しておきたいのだが、不思議なことに、橋下徹市長以外の維新の党の政治家は、テレビなどの討論会に出席しない。(4月30日の弁護士会シンポジウムは、維新側が直前にキャンセルし中止になった)。つまり、ほとんど橋下氏の弁舌だけが、大阪都構想を支えている。

 書店に並ぶ本は、大阪都反対が圧倒的に多い。5月5日、大阪での学者による記者会見には、批判意見を持つ106人が名前を連ねた。橋下市長などが職員に発言を禁止し、批判する記者や学者を「個人攻撃」する中ですら、反対意見が続々登場していることは、注目できる。

東京では分からない大阪の事情とは

 賛成論は、東京の数名の学者だけが述べている。それらに対するコメントは別のところで試みたので、本稿では、東京から見えない大阪・関西の事情というものをご理解いただけるよう、解説を試みる。

  1. よく指摘されるように、東京の「都区制度」(東京市を廃止し都に吸収したシステム)にも欠点があるが、大阪に適用すると、より矛盾が増幅する。大阪では東京と違い、特別区への財政調整の税源が豊かでなく、かつ市が府に占めるウェイト(=府から配慮を受ける程度)が人口で3分の1しかないからだ。
  2. 東京では国が各種施設を作ってくれるが、大阪(そして東京以外の地方)は少なく、府県や指定都市の責務が大きくなる。たとえば、東京には国立大学が11もあるのに、大阪は2つで、その分、府立大と市立大が、住民に良質の高等教育の機会を提供している、といった見方が合理的だ。
  3. 東京の発展を「都区制度」の成果だとする主張は研究者レベルでは聞かれず、むしろ首都への機能集中とグローバリゼーションが原因だと考えられている。言い換えれば、大阪の「没落」は、先進国共通の現象として理解するべき側面がある。人口、GDP(国内総生産)、大企業本社数などの統計を見ると、マンチェスター、リヨン、釜山が首都に対して持つ比重よりも、関西の東京に対する比重はまだしも大きい。

     ただ、大阪の経済力の伸びは全国平均と同程度だが、東京には差を付けられている。研究を要するが、本来は首都に及ばない「第2都市」が、歴史的蓄積と、大阪府と市という2つのエンジンの努力によって、何とかその地位を保っているとは解釈できないだろうか。

 筆者も、もちろん大阪には頑張ってほしいが、東京との量的な競争ではなく、むしろ「質的な」競争を期待したい。

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「大阪都=大阪市廃止分割は、大阪を弱く不便にする」の著者

村上 弘

村上 弘(むらかみ・ひろし)

立命館大学法学部教授

1954年京都市生まれ。京都大学大学院修了、法学博士。ドイツ・コンスタンツ大学などで研究。専門は行政学・政治学・地方自治論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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