「世界鑑測 田中信彦「上海時報」」

1元は10円か、それとも100円?

覚えておくと中国で便利な「生活実感レート」

  • 田中 信彦

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2006年4月19日(水)

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 「中国の1元は日本円でいくらに相当するか?」。これは中国に住んだり旅行したりする日本人の間でよく交わされる議論である。為替レートでは1元=15円弱なのだが、実際に使ってみれば日本の15円より使いでがある。つまり実質的な価値のレートは1元=15円より「元高」であるわけだ。中国の社会について論じるうえで、そのお金で「実際に何が買えるのか」との観点は重要で、表面的な為替レートの視点では見えない世界が開けてくる。

 まず「1元」というお金だが、今の時代、中国といえどもさすがに1元で買えるものは多くはない。

 牛丼の吉野家に行くと、2cm四方ほどのビニール袋に入った紅ショウガがカウンターに積んであり、「必要な人は1元を箱に入れ、持って行ってください」と書いてある。

 市民に最も身近なのはバスか。上海では空調なしのバスは1区間1元。空調付きは2元。ちなみに地下鉄は2元が最低区間である。

「1元ショップ」にはちょっと無理あり

 街では時折「1元ショップ」を見かける。日本の100円ショップの感覚だが、品揃えは貧弱で、見るからに安っぽいものが多い。実際、1元ではいささか無理があるらしく、最近は「2元ショップ」も増えてきた。

 食べ物でいくと、街角でウイグル族の人たちが売っている羊の串焼きが一本1元である。あと、セブンイレブンなどのコンビニで売っているおでんも1本0.7元から1元ぐらい。
 何の根拠もなく並べてみたが、こうしてみると、人民元の1元はおおむね日本円で100円ぐらいの使いでがありそうだと思える。

 値段の話をもう少し続ける。

 昼にオフィスで食べる宅配弁当はおかずの品数によって6〜10元。従業員食堂もそんなものである。レストランで4〜5人で夕食を食べると、1人当たり30〜40元ぐらいか。日本でも職場の昼食は500〜800円ぐらいだろうし、レストランで会食すれば1人3000円ぐらいはするだろう。やはり1元100円の感じに近い。

 着る物はどうか。高いほうはきりがないが、先日、運転手さんが「珍しく妻が1足100元の靴を2足も買ってくれた」と喜んでいたから、100元の靴はそこそこの品物と認識されていることが分かる。この春、就職活動をしている大学生が紺のスーツを着ていたので聞いてみたら、500元ぐらいと言っていた。「1元=100円説」を取れば、100元の靴は1万円、500元のスーツは5万円となり、これもおおむね感覚に合致する。

 上海中心部に通勤1時間半ぐらいの新築マンション(居住面積80平方メートル)は30〜40万元程度する。建物のクオリティは違うが、東京近郊では3000万円ほどではないか。ここでも1元=100円説がそれなりに成立している。

家電、車だとレートが激変する

だが電気製品や車となるとやや状況は異なる。これらは国際的な相場があって、どこの国でもそう大きく値段は変わらない。たとえば日本で3万円する家電製品は、中国でもきっちり1元=15円換算で2000元、もしくはそれ以上払わないと買えない。車は政策的な要因もあって逆に中国の方が高く、日本車は日本国内価格の5割増しぐらいになる。つまり車を買おうと思えば、1元=10円ぐらいの価値しかないとも言える。

 つまりざっくりまとめると、中国では「衣・食・住」関連商品やサービスは為替レートで考えた見かけより安く買える。一方で家電製品や車などグローバルな共通性の高い製品群は相対的に高く、なかなか買い難いということになる。

  この「1元100円説」を、私は様々な場面で応用している(上海や北京など超大都市は物価が高いので、1元70円ぐらいに調整している)。たとえば沿海地域のホワイトカラーは月額3000元程度の賃金が普通で、これは為替レートでは4万5000円でしかない。しかし実際の「使いで」で見れば日本の30万円ぐらいに相当することになる。「かつかつ暮らせないことはないが、子供の教育費や住宅ローンはちょっと無理」という感じだろう。

 上海のタクシーは初乗り3kmまで10元である。為替レートでは150円で、私は安いと感じるが、1元=100円説なら初乗り1000円だ。市民にとって安くはないが、どうにも乗れない金額ではないというニュアンスがよく感じ取れると思う。

 非常に大ざっぱな論ではあるが、中国のお金に関する数字を見聞きする時、心に留めておいていただければ、より中国的実感に近い感覚を持てる効果はあると思う。

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