「門倉 貴史の「BRICsの素顔」」

インドの意外な有望産業――外国人を虜にする「病院力」

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2006年6月5日(月)

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 インド経済の高成長をけん引しているのは、IT(情報技術)産業や製薬産業ですが、最近では、医療産業も成長セクターとして注目を浴びるようになってきました。そこで、今回はインドの最新医療事情についてみていきましょう。

 ここ数年の間に、インドの都市部には近代的な私立病院が集積するようになりました。こうした私立病院には、【1】X線CT(コンピューター断層撮影装置)【2】MRI(磁気共鳴画像診断装置)【3】RI(核医学検査装置)【4】PET(陽電子放射断層撮影装置)といった高額の最先端医療機器や設備が整っています。 

 また、欧米の一流大学で研鑽を積んだ優秀な医師が多数在籍しており、その技術水準は周辺国のなかでは相当高いといえます(ただし、看護婦やパラメディカルの水準はまだ低いそうです)。脳外科や心臓手術などで国際的に高い評価を得ている病院も少なくありません。

高度な医療水準、低い医療費、英語の通じる環境

 たとえば、ニューデリーやマドラスなどインド国内各地でチェーン展開をしているアポロ・ホスピタルは、心臓のバイパス手術や心臓・肝臓の移植手術などの分野で世界のトップクラスに入る病院です。インド内外から訪れる患者数は年間9万5000人にも及びます。 

 そのほか、ニューデリーにあるエスコート病院や、ムンバイにあるジャスロック病院などにも高度な技術を持った医師が多数在籍しています。

 しかも、物価水準が低いため、これらの病院で手術にかかる費用は欧米の数分の1程度にすぎません。

 具体的に、米国とインドの手術費用を比較すると、骨髄移植の場合、米国が25万ドル程度となるのに対して、インドは6万9000ドルと約4分の1の値段です。生体肝移植の場合、米国の30万ドルに対して、インドはわずか6万9000ドル程度ですみます。

 患者が手術を受ける際には、手術までの待機時間も問題となります。英国や米国では少なくとも3カ月の待機時間が必要ですが、インドでは待機時間はほとんどないという利点があります。

 安価な費用で高度な医療サービスを享受できるうえ、英語が通じることなどから、医療費の高額な欧米や近隣のアジア諸国からインドの病院を訪れる外国人患者は後を絶ちません。豊胸手術や脂肪吸引なども行っているので、美しくなることを目的にインドを訪れる外国人女性もいます。最近では、インドへの医療パッケージ・ツアーを扱う旅行代理店も出てきました(メディカル・ツーリズムと呼びます)。

 実際、インド政府とマッキンゼーが共同で行った調査によると、2004年にメディカル・ツーリズムでインドを訪れた外国人の数は前年比15%増の15万人に上ったということです。

 メディカル・ツーリズムの成長余地は大きく、2012年にはその市場規模が1000億ルピー(約23億ドル)に達するともいわれます。インド政府は、将来的にメディカル・ツーリズムがITセクターと並ぶ成長セクターになるとみており、その新興を図っています。

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著者プロフィール

門倉 貴史(かどくら・たかし)

門倉 貴史

エコノミスト。1995年慶應義塾大学経済学部卒業後、(株)浜銀総合研究所入社。99年(社)日本経済研究センターへ出向、2000年シンガポールの東南アジア経済研究所(ISEAS)へ出向。2002年4 月から2005年6月まで(株)第一生命経済研究所経済調査部主任エコノミスト。2005年7月からはBRICs経済研究所のエコノミスト・作家として講演・執筆活動に専念。専門は、日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。



このコラムについて

門倉 貴史の「BRICsの素顔」

このコラムはニューヨーク、ロンドン、サンノゼ、香港、北京にある日経BP社の支局と協力しながら、米国や欧州はもちろんのこと、世界経済の成長点とも言えるブラジルやロシア、インド、中国のいわゆるBRICs、エネルギーや国際政治の鍵を握る中近東の情報を追っていきます。記者だけではなく、海外の主要都市で活躍しているエコノミスト、アナリストの方々にも「見て、聞いて、考えた」原稿を提供してもらいます。

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