「世界鑑測 田中信彦「上海時報」」

上海人の「一日一善」が増えている

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2006年8月2日(水)

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 最近、上海の人々が親切になってきたような気がする。これは全く個人の実感値で、客観的な証明は難しいのだが、当地に長く住んでいる日本人に聞いてみると同じような感覚を持っている人が少なくない。社会が豊かになって人々の気持ちに余裕が出てきているのではないか。国全体から見れば一部の話であるとはいえ、中国社会も内側から変わりつつある1つの表れであるように思う。

左折を待ってくれたドライバーにびっくり

 先日、自宅近くの歩道を歩いていたら、果物を山積みしたリヤカーを引っ張った女性が通りかかった。この周辺は高級マンションが多いので、富裕層を相手に道端で果物を売っている人があちこちにいる。今の時期は桃が中心で、この女性も桃を積んでいた。

 ところが歩道を横切る路地の部分に差しかかると、歩道に急な傾斜の段差がついており、女性はリヤカーを引っ張るのだが、なかなか段差を乗り越えられない。すると通りがかりの小ぎれいな身なりの30代ぐらいの男性がリヤカーを後ろから押し、今度は簡単に傾斜を上がることができた。

 リヤカーの女性がはにかみながら小声で「謝謝(シェシェ)」とつぶやくと男性は微笑んで去っていった。

 まあ別に何ということはない話なのであるが、通りすがりの露天商に親切にする人というのはあまり見たことがなかったので、自分が傍観していたことへの反省も含め、とても印象に残った。

 その翌日、車に乗っていてセンターラインのある道路で、ある建物に入ろうと左折(中国は右側通行なので、対向車線を横切って曲がることになる)しようと待っていた。すると前から来た車が停まり、先に曲がれという手振りをする。こちらの運転手がハンドルを切って右手で軽く挙手をすると相手も手を上げて応えた。

駅の階段でも驚いた!

 これだけの話なのであるが、実のところ中国では人に譲ってくれる車というのは非常に稀で、あまり体験したことがない。このようにドライバー同士が挨拶を交わすことも少ないので、これも印象に残った。

 そして、これはそれより少し前の話なのだが、江蘇省のある街に行くために上海駅から列車に乗った。ホームに上がる階段を上っていると、子供を抱いて手に大きな鞄とビニール袋を提げた女性が重そうな様子で歩いている。

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著者プロフィール

田中 信彦 (たなか・のぶひこ)

HRコンサルタント。在上海。1959年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、毎日新聞社に記者として入社。88年からフリーで執筆活動に入る。現在、日本と上海の両方を活動拠点としている。専門は人的資源(Human Resources)の領域を中心にした中国および日本の経営マネジメントについて。
筆者のブログ
主な著書に、
『中国で成功する人事 失敗する人事』(日本経済新聞社) 『人事・採用の基礎知識--中国編』(メディアファクトリー) 『ぼくの上海行商紀行』(文藝春秋) 『日本人の知らない中国人の私的事情』(講談社) などがある



このコラムについて

世界鑑測 田中信彦「上海時報」

このコラムはニューヨーク、ロンドン、サンノゼ、香港、北京にある日経BP社の支局と協力しながら、米国や欧州はもちろんのこと、世界経済の成長点とも言えるブラジルやロシア、インド、中国のいわゆるBRICs、エネルギーや国際政治の鍵を握る中近東の情報を追っていきます。記者だけではなく、海外の主要都市で活躍しているエコノミスト、アナリストの方々にも「見て、聞いて、考えた」原稿を提供してもらいます。

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