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対テロ戦争の日常的な光景

アフガニスタン・現地リポート【1】

2006年10月26日(木)

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 「あと10分でカブール国際空港に到着します」

 イスラマバードからのパキスタン航空の機内アナウンスで目を覚ました。窓から下を見下ろすと、緑のないごつごつとしたはげ山が見え、平地にはところどころに集落が散在しているのが見えるが、近代的な建造物はほとんど見当たらない。

 飛行機のタラップを降りると、アフガニスタン人のガイド「ヤマ」が私の名前の書かれたボードを持って待っていた。

 「ようこそアフガニスタンへ」

 2006年10月、私はアフガニスタンの首都カブールに降り立った。ヤマに連れられてターミナルの外に出ると、ボディーアーマーを身に着け腰にピストルを差した大男が2人、防護車両の前に立って私を待っていた。私の警護をする民間軍事企業(PMC)の武装警備員である。

 「このボディーアーマーを身に着けてください」

 警備員の1人が言った。彼は北アイルランド出身だという。重たいボディーアーマーを着込んだ私は、トヨタのハイラックスを改造した防護車両の後部座席に乗り込んだ。

 「万が一襲撃などの緊急事態が発生した場合は、できる限り身を低くしてください。危機から脱するために高速でバックすることもあります。車から降りる時には彼(もう1人の警備員)の指示に従ってください。彼があなたをエスコートいたします。彼が動けない場合は私があなたをエスコートいたします。我々は2人とも武装しており、救命救急の訓練も受けております」

 さすがに少し緊張せざるを得ない。空港と市の中心部を結ぶ大通りでは少し前に事故があったため、裏道を通っていくとのことだった。空港を出てすぐ裏道に入ると、舗装道路はなくなり、でこぼこの砂漠の道に変わった。  

 道沿いにはブロックや石を重ねて泥で塗り固めただけのような粗末な平屋の家が並び、砂と泥で汚れたぼろ着をまとっただけの現地の人々が、砂埃を上げて走る我々を煙たそうな顔で見ている。砂埃で髪の毛がバリバリに固まってしまった女の子が裸足でそこら中を歩いているのが見える。今にも車輪が壊れそうなボロボロのリヤカーを引くロバを全身でコントロールしながら危なっかしく操縦している男の子が、我々の存在に気づいて道を空けている。

 この貧しくいかにも弱々しそうな人々の間を、頑丈な防護車両に乗って武装した屈強な男たちが逃げるように走り抜けていく。

 アフガン戦争から5年が経ち、ブッシュ政権が「対テロ戦争の成功例」と自画自賛するアフガニスタンの首都カブールの、これが日常的な光景となっていた。

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「対テロ戦争の日常的な光景」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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