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中国人社員に「見るべき背中」を

日系企業が勝ち残るための愚直な早道

  • 田中 信彦

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2006年11月22日(水)

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 「先輩の背中を見て仕事を覚える」という言い方が日本にはある。

 日本企業に蓄積された社内の技術やノウハウは、上司や先輩と新入社員が現場で密着して長い間一緒に仕事をする中から、濃密なコミュニケーションを経て伝承されてきた。中国の日系企業で最大の弱点は、この「見るべき背中」がないという点にある。

 中国進出が早かった企業でも、新卒入社のトップランナーがようやく10年めを迎えようかという段階で、「背中」を見せられる人材は非常に少ないからである。日系企業の競争力強化には、この点を常に頭において対策を考える必要がある。

高密度の共同作業で「勝ちパターン」をすり込む

 日本国内の大手企業で、新卒社員はどのようにして一人前の戦力になっていくのか。入社時の導入研修は別として、日本企業は基本的に集合研修や理論的な学習はほどほどにして、新卒社員を現場に配属し、上司や先輩と密着しながら時間をかけてビジネスマナーや業界の常識、専門知識、商売のコツなどを学んでいく。この10年ほど、「形式知化」の重要性が叫ばれ、さまざまな取り組みがなされているけれども、現実はそう大きく変化したとは思えない。

 確かに仕事のやり方の形式知化が遅れていることは技やノウハウの継承の障害になっている。しかしその一方で、なかなか形式知化しにくい微妙な勘どころを長期間の密度の高い共同作業で確実に伝承してきたことで、日本企業特有の緻密さが形成されたのも事実だろう。ここが消えてしまっては国際的な競争力を失うことなりかねない。

 大手企業とは過去の競争に勝ってきたから大きくなったのであって、その意味で、社内は成功体験の束といっていい。営業でも財務でも人事でも生産でも研究開発でも、さまざまな「勝ち方」を持った人が山ほどいる社内に、高いポテンシャルと柔軟な思考を持つ若い人材を放り込み、「成功パターンのシャワー」を5年、10年と浴びせ続けることによって組織の強みを刷り込んできたのが日本企業である。

先輩がいなければ日本流は成り立たない

 では中国の日系企業はどうか。中には1970年代、80年代に進出したところもあるが、数としては非常に少ない。多くは中国経済が天安門事件の影響から脱し、急成長を始めた93~94年以降の進出である。つまり本格的な企業活動を初めてから、長いところでも10年、多くはまだ数年というのが実態なのである。

そういう企業に入った中国の若い人材にしてみれば、「勝ち方」を持っているのは数少ない日本人赴任者だけ。その赴任者も「総務、人事、財務部長」が1人来て、数年すると帰ってしまう。技術者も本来なら畑違いの分野を必死に指導している。自分の前を走る同胞の上司や先輩はほとんどいないか、いても非常に少なく、自己流の手さぐりで市場経済の荒波に立ち向かってきた人ばかりである。同じ新卒が入社しても、日本と中国で社員の成長のスピードが全く違うのは当然であろう。

 日本人赴任者たちの多くは、実は自分たちが入社以来、非常に恵まれた環境の中で、会社が何十年かけて蓄積したノウハウを知らず知らずのうちに湯水を浴びるがごとく吸収してきたのだという事実を忘れてしまい、「中国人は…」と不平をいう。周囲に「見るべき背中」を持たない中国人社員が日系現法の中で成長していくことがいかに難しいことであるか、そこを慮る想像力を持たねばならない。

 また人が育つには適切なキャリアモデルが必要だ。キャリアモデルとは「こういう経験を積んでいけば自分はこうなるのだな」という指標とすべき人物像のことである。日本の大手企業の社員がなかなか辞めないのは、辞めずにいい目を見たキャリアモデルが過去にたくさん存在したからである。

 ところが中国の日系現法の大半にはこうした有効なモデルがない。

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