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イランに「宣戦布告」したブッシュ政権

2007年1月18日(木)

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ブッシュ大統領のベーカー提言に対する回答

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ブッシュ大統領、イラク新戦略を発表 - 米国
ブッシュ大統領、イラク新戦略を発表 - 米国
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 ブッシュ大統領が1月10日に発表した新イラク政策では、リスクの高い増派オプションの有効性にマスコミや評論家の議論が集中した。その一方で、あまり注目されていないが、ブッシュ政権がイランとシリアに対して、改めて非常に強硬な姿勢を示した点は今後の中東情勢を見るうえで極めて重要である。

 「イラクの成功には、過激派の挑戦に直面しているイラクが、その領土の保全と地域の安定を守ることが不可欠な要素である。これにはイランとシリアに本気で対処することから始めなければならない。これらの2つのレジームは、彼らの領土を使ってテロリストや反乱勢力がイラクに自由に出入りするのを認めている。イランは米軍を攻撃するための物資面での支援をしている。我々はわが軍に対する攻撃を断固阻止する。我々はイランとシリアから(武装勢力への)支援の流れを遮断する。そしてイラクにおける我々の敵に対して先端兵器と訓練を提供しているネットワークを探し出して壊滅させる」

 これまで以上に強い口調であり、「イラクの安定のためにイランやシリアと直接交渉せよ」というジェームズ・ベーカー元国務長官等ワシントン政策コミュニティーにおける「現実主義者」の提言に対するブッシュ大統領の回答であった。

ネグロポンテ情報長官はなぜ「更迭」されたか?

 この発表に先立ってブッシュ大統領は中東政策にかかわるスタッフの人事を大幅に刷新したが、そこでも同政権のイラン、シリア政策の方向性が表れていた。特に米国の情報関係者たちの間で話題となっているのは、国家情報長官にジョン・ネグロポンテに代わりマイク・マコネルを任命した人事についてである。この背景には、イランの評価を巡りチェイニー副大統領とネグロポンテ元長官が激しく対立していたという事情があったというのだ。

 「我々の評価では、イランが核兵器を保有するまでにまだ何年も時間がかかる。恐らくは10年以上先になるのではないか」。これはネグロポンテ氏が昨年4月に述べたイラン核開発に関する「評価」である。これはイランを危険視して強硬策を取るべしと考えているチェイニー副大統領や、政権外で彼らを支援するネオコン派言論人たちの「評価」とは真っ向から対立する。

 実際にネオコン系シンクタンク「安全保障政策センター」のフランク・ギャフニー所長は、ネグロポンテ氏の解雇を声高に呼びかけ、とりわけネグロポンテ氏がイラクの大量破壊兵器に関してブッシュ政権強硬派の評価に疑問を呈していたインテリジェンス分析官を雇っている点を指摘していた。ネグロポンテ氏は国務省で情報分析をしていたトーマス・フィンガー氏と元IAEA(国際原子力機関)大使だったケネス・ブリル氏を分析スタッフの要職に就けているが、この2人ともブッシュ政権がイラク戦争前に大量破壊兵器の脅威を主張していた時に、その評価に疑問の声を上げていたのである。ギャフニー氏は、ネグロポンテ氏が「このように大統領の政策を積極的に妨げようとしている官僚たちを、政治的に重要な地位に昇格させているのは極めて問題である」としてネグロポンテ氏を痛烈に批判してきたのであった。

 米情報関係者たちの間では、「ネオコンたちがイランに対する先制攻撃への道を開くうえで、最初の戦いはネグロポンテを封じることだ」と言われてきた。それ故、情報コミュニティでは、ネグロポンテ氏に代わり「小物」のマコネル氏が任命されたことは、「チェイニー副大統領の言いなりになる」からではないかと見られているのである。かつてFBI(米連邦捜査局)で対テロ部門に所属したヴィンセント・カニストラロ氏は、この人事を「大惨事」と表現している。

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「イランに「宣戦布告」したブッシュ政権」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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