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農業よりもホームレスが儲かる中国のいびつな現実

76歳の老人が乞食社会に潜入 2カ月にわたって実態を調査

2007年1月19日(金)

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 中国の週刊誌「瞭望新聞週刊」が2006年の年末に興味深い記事を掲載した。広東省深セン市に住む、かつて北京の幹部職員だった76歳の曹大澄が、乞食に変装して乞食の仲間に入り、2カ月間にわたって、深セン市の乞食社会の調査を行ったというのである。

乞食に変装して厳しい現実を調査

 調査の目的は、浮浪児(=ストリートチルドレン)を痛めつけ、脅して乞食をさせている極悪非道な黒幕をあばくためであり、曹老人はこの調査結果を計2万字からなる「子供を救え、深セン街頭の捨て子と病気や身体に障害を持つ子供乞食の生存状況調査手記」にまとめた。「瞭望」誌は曹大澄と単独インタビューを行い、深センの乞食社会と哀れな子供たちの実態を聴取している。

 ある時、曹老人が深セン体育館付近を歩いていると、黒い服を着た太った子供がコンクリートの路上に縮こまって、両目を固く閉じて昏睡しているのを見つけた。「どうしたのか」と子供に触れてみたが、まったく目を覚まさない。

 すると、突然に後ろから声がして、頭にタオルを巻いた女が立ち上がり、棒で地面をたたきながら曹老人に襲いかかろうとした。曹老人は女の顔に見覚えがあった。

 「(黒龍江省の)チチハルであんたを見たことがある。あの時、女の子を抱いていたが、どうして深センにいるんだ」。曹老人がこう尋ねると、女は「わたしゃ、あんたなんか知らない」と言う。
 「確か、あんたは家が河南省の駐馬店にあり、黒龍江省に来て乞食をしてる、と言ってた。子供が脳の病気を患ったけど、お金が無いので病院に行けない、と嘆いていた。だから、私はあんたに100元(約1500円)あげたんじゃないか」と言うと、女は笑いながら、「あー、思い出した。あんたは良い人だったよ。100元くれたね、わたしゃ覚えているよ」と答えた。
 「あの子の病気はどうした。治ったかい」。曹老人がこう聞くと、「あの子は死んだよ。あの病気は治らない」と答えた。「あの子が死んだから、夜陰に乗じて公園に置いておいたら、翌日には収容されてた。焼き場に持ってゆけば、焼くのに数百元も取られて、根堀り葉堀り聞かれる。だから、捨てたのさ」と言い放った。

 「この子はあんたの子かい」と尋ねると、女は正直に「いや、この子のばあさんが乞食をすれば、病気を治す金が稼げるって、あたしに預けたのさ」と言うので、曹老人は10元(約150円)を取り出して小鉢に入れた。

 「この子の病気は何なんだい、どうして目を覚まさないの」と聞くと、女は「脳の病気さ、眠ったら呼んでも目を覚まさない病気さ」と言いながら10元を拾い上げ、「よけいなお世話だ」と身を翻して元々隠れていた場所に戻り、通行する人を見張り始めた--。

 曹老人は2時間後にもう一度子供の状況を確かめたが、子供はまだ眠ったままだった。

乞食富豪と言われる男

 曹老人は不思議に思った。前回の子供も、今回の子供も「脳の病気」、これはどうも奇妙だ。これは背後に病気の子供を道具にして金儲けしている黒幕がいるに違いない。可哀想な子供のことを考えると、居ても立ってもいられず、曹老人は乞食に化けて調査を行うことを決意した。曹老人が乞食に変装して調査を開始したのは2005年11月であった。

 乞食の扮装で、杖をつき、喜捨用の弁当箱を持った曹老人は、金をせびる乞食たちに混ざって、毎日のように深セン市の繁華街を徘徊するようになった。乞食たちの多くは河南省から来ていることが分かったが、たまたま曹老人は若い時に河南省に居たことがあり、河南省の方言ができたので、同郷人に成りすまし、乞食たちと親しくなるのも早かった。

 彼らとの会話から、深センの乞食たちの間で有名な「乞食富豪」と言われる男がいることが分かった。

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「農業よりもホームレスが儲かる中国のいびつな現実」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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川野 幸夫 ヤオコー 会長